パビャこさんとバテぃさん
バティ──略された名の彼は不意に見慣れた容姿をしたオンナを見かけた。
多多邪の宮の寵愛を受け、生意気な態度をとる不良娘。パーラム・イター。
昔から目障りで仕方なかった。どんなに貶しても暖簾に腕押しでニヤニヤしている。それどころか役割を放棄してのらりくらり。
もし彼女が同性ならば決闘を申し込んでいた所だ。
「ヤツも此岸をふらついていたか。生意気な」
何やら他人の家の地面を熱心に探し、こちらの殺気にも気づきもしない。
「おい。パーラム・イター」
「ン?ダレ?私はぁパビャ子ナンダケド〜〜~」
振り返るとイモムシを口にして、手にはたくさんの昆虫を握りしめていた。
「おエぇっ!何だそれは?!そんなモン食ってッ?!」
「ええ?美味しいよ!食べるぅ?」
「食べるか!どうしたんだ貴様っ!気でも狂ったのか?!」
「気?狂ってるよ!!」
眩しい笑顔で答え、ムシャムシャとムカデを咀嚼する様はおぞましかった。バディは彼女の身にとんでもない事態が起きたのだと知る。
「大変だ!周りの者に知らせなければ──」
「だから私はパビャ子さんなの。ダレちみは??」
「パビャ子…他人の空似なのか?ま、まあ、聞いた事はあるが実際に前にすると戸惑うな」
「パビャ子さんはパビャ子さんしかいませーん。で、お食事中になに?」
クチャクチャと雑にコガネムシを噛むと、パビャ子はご飯探しに集中しようとした。
「知り合いに似ていたのだ。たが、その様子だと人間違いだ…。すまない」
「いいの!はい、お礼に脂の乗ったミミズをあげる!美味しいから食べてね!」
「うっ、あ、ありがとう…」
うねるミミズを手にバティは無理やり笑みを作った。虫が苦手ではあるが、無垢な様子に勝てまい。
(厄日なのか…明日は矢が降るかもしれんな)
パーラム・イターは今もいない。彼岸へ追いやらないといつか破滅してしまう。
有象無象がこの世にはびこるのを誰が止める?
「…」
──どこへに行って遊んでいるのだろう?