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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆litとInsane☆  作者: 犬冠 雲映子
きりとりせん(ミス(Miss)ちゃんと南闇くんの旅、etc.)
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みえてる

 ラファティ・アスケラは独房で暇をしているパーラム・イターに、意を決して話しかけた。

「あの、少し良いですか…最近、変なものを見るんです」

「ん?変なもの?目にゴミが入ってんじゃないのお?」

 聞く耳を持たない彼女に、陰鬱な顔でラファティは首を横に振る。

「…。パーラムさんはあの世を見た事がありますか」

「無いね。私は渡しをするだけ、実の所、あの世なんてない。チリトリにゴミを集めてダストボックスに投げ入れるだけ──」

「…そうですか」頷き、しばし黙り込んだ。

「あの人がいるんです。彼岸に渡ったはずの人が、俺の視界に入るんです」

「精神科へ行った方がいいんじゃない?」

「この世の者でない輩が、ですか」

 半笑いの彼にパーラムは片眉をあげて、独房の窓の外を指さした。

「あの窓の外には何がある?」

「何も無いです。作られた世界ですから」

「それと同じ。あたしたちは作られた世界の外側を想像して、それを目指しているだけ。ラファティ・アスケラ。あんたのいう彼岸に渡ったヤツが見えるのなら、そいつは無だ。作り出した存在か、無がやってきたか…どっちかになる」

 無がやってきた。それは虚無の世界から死がやってきたのか。

「俺は…後者がいいです」

「はは!結局はあの時のオンナと同じか!」

「えっ」

「八重岳 イヨ子をなだめたのはお前だろ?ラファティ。可哀想なイヨ子。そんな覚悟を持つヤツに、説教されたってか」

 声を出そうとして、そうだったと閉口する。イヨ子は死を受け入れ、渇望していたのか。

「…悪い事をしました。俺──」

「いいんじゃない?そんなモンだよ。後の祭りさ。みーんなね」

 独房の床で伸びをすると、彼女は興味を無くしたように雑誌を読み始めた。

(サリエリ。俺を死の国へ連れていくならそうすればいい…)

 イヨ子の虚ろな目が脳裏をよぎる。あれは虚ろだったのではない。

 違う世界を見ていたのだ。

 ──異常じゃあないんですか。…正常って何ですか?分かってそれを。

 イヨ子の怒りが鮮明で、鋭利な感覚を伴う。

(後悔はない…後悔は、ないんだ…)

夏バテ気味です。

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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