おーだーめいど
「お揃いの物が欲しいだぁ?アイツは何をヤキモチ妬いてんだかね」
ラファティ・アスケラの報告に、至愚は呆れて脱力しかけた。
「良いんじゃないんですか?子供らしくて」
「その純粋無垢な気持ちが憎悪に変わってみろ。クスを攻撃したらそれこそ処分だ」
「まあ」
二人は公園のベンチで蒸してきた夜風を浴び、しばし黙った。
「そうだね。三人に特性のチョーカーを作ってやろう。暴走した時のセーフティになるしさ。本人たちには分からないような可愛らしいヤツを…」
「ネットで検索してみます?チョーカー、俺もよく知らないンすけど」
スマホを取り出して、チョーカーを検索すると通販サイトでオシャレな物がたくさん表示された。
「へえ。今は何でも出てきていいね」
「至愚さんはどれが良さげですか?」
「病みかわいいとかじゃなくてシックなヤツがいいか。ほら、コレはいいな」
二人で決まるまでワイワイして、やっとこ形が決まった。
もちろんネットで頼むのでない。至愚とラファティが作る『オーダーメイド品』だ。
「三人ともお揃いのチョーカーを作ったんだ。孔雀の羽模様があしらわれた美しい金細工もついてるぞ」
三人にチョーカーを披露すると、パビャ子が分かりやすく歓喜した。「わ!わー!すげ!高そう!」
「特注品だから高いかもな」
「ラフ。いいの?パビャ子のわがままで、こんな贅沢な…」
乎代子が手に取り、眺め回した。見事なものでまるで社交界に出てくる貴婦人の持ち物のようだ。
「あんたら姉妹なんだから。それらしい事をしてやんないと、と思ったんだ」
「ありがとう!ねー、ラフ、つけて!」
言ったそばから茶髪オンナがラファティにけしかけ、それぞれにチョーカーをつけている。それを傍受しつつも、人面獣は我ながらにバカバカしい遊びをしていると歯がゆくなった。
造りものに人間の真似事をさせるなど。
(まあ…セーフティーになるンなら良い…)
造りものが本物になったらどうする?
それはタブーだ。
(天罰が下るかもしれない。…あたしはどこまでも甘ったれだ)
脳裏でパーラム・イターがせせら笑っている気がした。お人形さんで遊ぶのは楽しいか?
彼女はそう茶化してくるだろう。
「じゃ〜ん。乎代子とお揃い。写真とろ〜」
「何で俺のスマホなの?」
和気あいあいとしている彼らを見て、気を取り直そうとする。神に罵られるのならそれでいい。もはや血まみれの道を歩いてきて、今さら怯えてどうする。
陰鬱な雰囲気をまとっていたラファティのつかの間の楽しそうな顔を見て、至愚はわずかに微笑んだ。