はっぴーへぶん、
まるで西洋画から飛び出してきたかのような、日本人離れした容姿端麗な男。まさに天使の化身…ラファティ・アスケラは新しい職場のデスクにふと見た事のない銘柄の紙タバコを見つけた。
ポップな絵柄の『ハッピーヘブン』なる見た事のないブランドだった。
誰かが落としたのだろうか?それとも忘れていったのだろうか?
ラファティはあまり喫煙しない方なのだが、話題の新作なのかと気になり、一本盗みをおかした。
その時点でもやは天使でも何でもない。ヤツは上機嫌に、コンビニに向かった。
「よう。お約束のご飯、買ってきてやったぜ」
ある街の一角にある廃墟化したボロアパートで、乎代子にコンビニ弁当やらを渡す。
「ありがとう。金欠で一週間、何も食べてなかったから」
「は…お前、スロットでもやってんのか?」
ゲッソリした乎代子を前に呆れ返った。
「いや、良い日雇いバイトがなかなか見つからなくてさ…」
「へー、そんな時もあるんだな」
「一回、ファミレスで働いたらクビになっちまって…陰気臭いとか、ウェイトレスが下手くそとか…散々だったわ」
はあ、とため息をつくと彼女は落ち込む。確かに陰気臭い雰囲気があり、作り笑顔も奇妙だ。それに敬語であっても声色が他人からしたら無愛想に聞こえる場合がある。
「やっぱ清掃とか、工場が向いてるんだよ。私は…」
「まーまー、落ち込むなよ。あ、そうだ。新しい紙タバコ持ってきたんだ。吸うか?」
「気晴らしになるなら…」
マッチを差し出し火をつけ、タバコへ移してやった。乎代子はヘビースモーカーではないが、たまに安タバコを吸っている時がある。決まって嫌な思いをした時やグロテスクな惨状を目にした日だ。
常に陰気臭く、表情筋の動きが少ない彼女にも気を紛らわす必要がある時間があるのだと、ラファティは眺めていた。
煙を吸い込むと暫くして白目を剥くや、バタリと乎代子は畳に倒れ込んだ。
「乎代子?!どうした?!…まさか、殺人兵器?!」
しかしそんな物を持ち込む輩が職場にいるだろうか?焦りながらも介抱しようとした瞬間、バネのように体を跳ね上げ、カサカサとはい回り始めた。
「ひ、ヒッ…」
「ぴょへーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!」
「に、人間の動きじゃねえ…乎代子!目を覚ませ!」
1作目でギャビー・リッターさんが吸っていたタバコです。