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虚無なありきたり 〜別乾坤奇譚〜 ☆litとInsane☆  作者: 犬冠 雲映子
きりとりせん(ミス(Miss)ちゃんと南闇くんの旅、etc.)
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さる の てんし

「ぎ、ギャア、ァ、だず、げでぇ、ェ」

 バリバリと内臓を生きたまま貪られ、タクシー運転手は必死に助けを求めた。

「きゃあ?きゃーあ?」

「だすけでーえー?」

 美しい金毛の猿、強いて例えるのならばハヌマンラングールのような化け物たちが、首を傾げながら眺める。タクシー運転手は首都圏郊外のある駅のロータリーでただ客を乗せて、ある山のすそ野にある、指定された病院の前にきただけだった。

 だが、病院ではあったものの廃墟化しているものだから不審に思って、後部座席を振り返った──ら猿に似た化け物たちが飛びかかってきた。

 そうして内臓や肉を食べられている。

「きゃあ?きやー?」

 猿もどきたちは異常に見開いた眼窩を運転手へ向け、傍観している。

「ヤニ臭いですねー。煙草を吸いすぎなのでは?」

 バリバリと血肉を食いちぎっていた『者』が人語を話した。

「あ、あ、いだ、い」

 純白のスーツを纏う、ブロンドヘアーの少女。防犯灯に照らされ、漆黒の黒目にヤギの瞳孔がうっすらと浮かび上がる。

 運転手はこれは悪魔だと確信した。

「ごちそうさまでした!お金、置いときますね!お釣りはいりませんので」

 ニッコリと笑うと少女は腰をあげ、廃墟へ向かっていく。猿もどきたちもつられて四つん這いで追っていった。

 猿もどきの背中には小さな金管楽器が背負われ、長い尾を揺らしながらご主人と共に消えていく。

 タクシー運転手は彼女が不可思議な組織に属していると、話していたのが過ぎる。

 天使代理人協会。

 冗談だと思って聞き流していたが、あれは天使ではない。

 暗がりに紛れ、周囲にたくさんの化け物が舌なめずりしているのが見える。あの少女のような人型の者ではない。

 この世の者でない、たくさんの存在が食べ残しを狙っている。

「あ、ぐ、ま──」

 息絶え、彼はヘッドライトに照らされ、アスファルトに血の海を作る。

 人間のいない国道で。

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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