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ながいきしてね

 パビャ子はお腹が空いたのでそこら辺にいた野鳥を追いかけた。理由は鳥が毛虫を咥えて、二つとも食べられたらラッキーだと思ったからだった。

 野鳥は変な茶髪オンナが追いかけて来るのを怖がり、土手に植えられた桜の木に逃げた。

「ぎぇ〜〜~!!!ぴィ、び、び」

 しかし普通ではない断末魔をあげ、ガサガサと葉を揺らし、羽と血飛沫が飛び散る。

「えーっ。先客?困惑」

 背に腹はかえられぬ。珍妙不可思議な桜の木に近づくと悪名高いアメリカシロヒトリの毛虫が大量についていた。

 彼らは茶髪オンナに気づき、ワサワサしだす。

「わあ、何でこんなに?」

 アメリカシロヒトリくらいは知っているが、幹が垂れる程いるとは珍しい。

「お前さんはこの世の者でない部類だな?」

 木の影から初老の男性の声色がした。

「まー、そうだけど。おじいさんも?」

「そうだ。私は先程、鳥に食べられそうになっていた若造を助けた」

「え、まさか!おじいさん、毛虫なの?!」

 ウゾリと大きな毛虫が顔を出す。例えるならヒグマくらい巨大で本来なら人間に目撃され、駆除されてしまうくらいに。

「ふうむ。お前さんは神聖なる蛾の末裔か。なら、同族だな」

「え、ま、まあ〜。おじいさん、不思議の国のアリスの芋虫おじいさんみたいだね」

「はは。私はタバコを吸えない。手がないからね」

 毛虫たちは敵じゃないと悟るなり、静かになった。

「蛾の末裔よ。腹が減っているのかい」

「まあ、でもいいやぁ」

 ミミズや虫を地道に見つければいいし、乎代子に奢ってもらえればいい。

「これをやる。この前、食べた子供が持っていた」

 木からポトリとお菓子が落ちてくる。

「ありがとう〜!おじいさん!」

 嬉しさのあまりガッツポーズをとる。おじいさんはそれを見て、なぜか悲しい気色になった。

「長生きするのだぞ」




「アメリカシロヒトリ?ああ、あの」

 乎代子からおにぎりをもらい、食べているとこの世の者でない部類に出会ったのを思い出した。

「いっぱいいるヤツでしょ?」

「うん」

 スマホで何やら検索すると、乎代子はふぅーんと頷いた。

「大人になれるヤツは少ないんだって。最初はあんなにいるのにね」

「えっ、全員が蛾になれないの?」

「みたい。たしかパーラム・イターも蛾だらけな場所にいたなぁ…」

 なぜ蛾を従えているのか、未だに解明──する気もないと彼女は言う。

「そのおじいさん、化け物だけどパビャ子を気にかけてくれていいひと?じゃん。長生きして欲しいなんてさ、中々言われる機会ないし」

 少し寂しげな顔で乎代子は笑う。

 それが無性に腹立たしくなり、茶髪オンナはムッとむくれた。なぜそんな顔をされなければならないのだ。

「乎代子にも長生きして欲しいよ!」

「うるさっ」

パビャ子と乎代子の、日常。

そうしてちょっとしたお互いの気持ち。

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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