めがね が かおから とれない
「ああーっ!何なのよ〜〜っ!最低ぇっ!!」
ツインテールの眼鏡をかけた女性が、路地で叫んだ。この暑いのにリクルートスーツを着て、不似合いなハイヒールで地団駄を踏む。
「なんでメガネがとれないのよっ!メガネくらいとれるでしょー?!フツー!!」
彼女は、『無猟の地』という施設名がついた違法な遊園地で働いていたトーローテレイン・フープという名を持っていた。
だがしかし今は違う。
「しかも、しかもっ…!甘いお菓子が食べられないとかっ!最低最悪っ!」
頭を抱えて不平不満をぶちまける。
「っるせーぞ!」
アパートの窓を開け、住民がキレてきた。
「あんたには分からないでしょうねえ!!」
「ああんっ?!?分かる訳ねーだろ!失せろ!!」
「あー!!うるさい!ふん!」
砂利道を怒り肩で歩いて人通りのある道路に出る。昼間というだけあって彼女、もといトゥローテレイン・ワォプ実は不審がられなかった。
昨日は職務質問されなぜだか留置所へ連行されそうになり、振りきった。地球では住所不定は疑われ最悪の場合、刑務所内に入れられてしまう。
そういう知識を手に入れた。
「ネットカフェとかいう場所ってどこにあるのかな。チッ。日本語とかよく分かんないのに、何で…」
宇宙人として長らく暮らしてきた彼女には日本語なる言語は知らない。見渡す限り日本人なる人種が歩き、見た事のない物体ばかりが存在している。
『無猟の地』で暇を持て余し、ぶうたれていた方が何倍もいい。
「あの変態殺人鬼。会ったら一発殴ってやる…!」
カツカツとハイヒールを鳴らしながら、ワォプ実はネットカフェを探すのだった。
元トーローテレイン・フープさん…。




