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まほうのやたい

魔法か違法か。

 洞太 乎代子は秋風の吹く帰り道、縁日にいるようなベビーカステラ屋さんが駅の近くで店を開いているのを見かけた。

 かなり人が並んでいる。そんなに美味しいのだろうか?

 少し気になり、自分も並んでみた。

 並んでいる人たちは帰路につくサラリーマンやOL、またはこれからどこかへ行くのかオシャレな格好をした若者などだった。

 駅が近いのもあるだろう。

 ベビーカステラの甘い香りにつられ、皆、買いたくなったに違いない。

 しばらくしてホカホカのベビーカステラを買い、乎代子も帰宅する。冷めてしまうのはもったいないが帰って部屋で食べた方が嬉しさが増す。そういう派なので我慢して、廃墟化した我が家──ボロアパートについた。

 するとアパートの前にパビャ子が待ち伏せしているではないか!

「ウゲーっ」

「あ、何それ!甘い匂いがする」

 クンクンと紙袋を目ざとく見つけると、茶髪女は「ん?」と予想外の反応をした。

「乎代子。これ、誰にもらったの?」

「もらった?買ったんだけど。駅前にやってたベビーカステラ屋だよ」

「ふぅーん。食べない方がいいよ。これ」

「は?」

 訳が分からず、乎代子は紙袋を睨む。そんなに独り占めしたいのだろうか?

「私──天才パビャ子が脅かしてあげるから、ちょっとそれを外灯の下に置いてみて」

「脅かす?え?何?」

「いいから〜」

 仕方なく、紙袋を近くの防犯灯へ持っていくとアスファルトに置いた。

「うがーっ!食っちまうぞ!」

 いきなり四つん這いになったパビャ子がナマハゲのようにベビーカステラへ突進した。傍から見たら変人奇人が何かやってるようにしか見えないが…。

「お?」

 それと呼応するかの如く、ガサゴソと紙袋が蠢きだし、中から虫と蛇の中間のようなこの世の者でない部類が何匹も紙を突き破りでてきた。

「な、なんだありゃっ」

「多分、人とかに寄生するこの世の者でない部類だよ。前に見た事ある」

 一匹呑気そうな個体を手に取ると、ソイツはパビャ子を大層怖がりのたうち回っている。「来年はヘビ年だ…」

「今それ言うぅ?そうだ、ヘビ年にしては縁起がいいから!皮を剥して飾っておこうよ」

「惨いな…お前…良いけど、外でやれよ」

 ヘビの脱皮した殼は金運を招く縁起物と言われるが、これでは逆に禍々しい物体になりはしないか?

 しかしあのベビーカステラ屋さんに並んでいた人たちは大丈夫だろうか。

 乎代子は頭の隅で彼らを思い出し、今日のささやかな夜ご飯が消失した事に悲しくなった。

隣の駅前に、たまーに美味しい匂いを漂わせる謎のベビーカステラ屋さんが出現するのを母親から聞いています。

ファンタジー小説だと道端に出現する屋台って不思議なアイテムなどをくれたりする展開が多いですよね。

摩訶不思議な雰囲気があります。

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小説家になろう 勝手にランキング

かなりランキングに向いている作品とは思えませんが、ぽちィーーー!!!としてくれるとマンモスうれピーーーー!!です。

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