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変わらない夜 Ⅰ

 僕は茶色い毛をしたトイプードル。ママから引き離されて、訳もわからないままペットショップに連れてこられた。

「君は可愛いからきっと誰かが可愛がってくれるよ」

ブリーダーの男の人にそう言われたけれど、一体誰が僕の家族になってくれるのだろう。

 そう思っていたある日、若い女の人が僕を見て「この子可愛い!」と黄色い声をあげた。

「抱っこして良いですか?」

女の人は店員さんに訊き、僕は女の人の腕に抱かれる。女の人の腕は細かったけれど、暖かかった。

「この子にします!」

女の人の一声により、店員さんとの事務的なやりとりが始まる。それから僕は女の人の1人暮らしの家で暮らすことになった。


 女の人にチョコという名前をプレゼントされ、僕は今日からチョコとして女の人と暮らす。女の人は僕のご飯に高いドッグフードをくれたし、可愛い服をたくさん着せて写真も撮ってもらった。

「僕モデルじゃないんだけどな……」

そう思いながらも、女の人が可愛い可愛いと言ってくれたので悪い気はしなかったのだ。さらに嫌いなワクチンを乗り越えた後は散歩にも連れて行ってくれ、旅行にも連れて行ってくれた。女の人は僕の知らない景色をたくさん見せてくれた。


 しかしそんな日々も長くは続かず、女の人の機嫌が悪い時は手が飛んでくるようになる。僕が何かしたのだろうかと思ってすり寄ると、

「邪魔! あっち行って!」

と鼻先でドアを閉められる。

 また別の日、僕はトイレを失敗してしまった。失敗してごめんなさいという気持ちで丸まっていると、

「もうチョコ! ちゃんとトイレでしなさいっていつも言ってるでしょ! 何回言ったらわかるのっ!」

と強く怒られてタバコの火を当てられた。熱くて苦しくてどうしたら良いかわからない。抵抗する気力もなかったので、僕はされるがままだった。


 女の人の機嫌を損ねないようになるべく関わらないようにしていると、女の人は僕を車に乗せて発車させる。どこに連れて行ってくれるのだろうと楽しみにしていた。しかし連れて行かれたのは楽しい場所なんかではなくて、誰もいない公園だ。

 女の人は僕をダンボールに入れる。それから冷たい目で

「可愛いって思って飼ったけど、なんにも変わらない。あんたはもう用無しね」

と言い放つ。女の人は車に戻り、そのまま発車していく。僕は訳もわからないまま公園に置いて行かれた。

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