思わぬ再会 【月夜譚No.298】
こんなところで再会するとは思わなかった。
突然の懐かしい顔に、思わず動きが止まる。
「あれ? どうしたの?」
ここへ連れてきてもらった女性に顔を覗き込まれ、我に返った私は改めて正面に立つ彼に向き直った。
少なからず彼も驚いている様子であるが、私よりは冷静らしい。一瞬目を丸くしたかと思うと、すぐに足を踏み出して近寄ってきた。
「久し振りだなあ」
「――うん、本当に」
彼と最後に会ったのは、まだ幼かった頃。食べるものが少なくていつも腹を空かせていたが、彼は私に食事を譲ってくれることが多かった。彼も相当に空腹だっただろうに、「お前は身体が小さいから食え」と半ば押しつけるように自分の分をくれていたのだ。
当時も今も申し訳なく思っているが、ここでならあんな思いはもうしなくて良いだろうし、こうして一緒にいられるなら恩も返せる。
「また会えて嬉しいよ、お兄ちゃん」
私がそう言うと、女性は私と兄を抱え上げた。
「顔を合わせてすぐなのに、仲良くなれそうで良かった」
彼女の笑みがとても優しくて、兄妹揃ってゴロゴロと喉を鳴らした。