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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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97 自分に吐く嘘


『まずは負傷者の回復に感謝を』


 画面越しとは言え各国の王様からの感謝で会議開始。

 いや、分かるよ。

 なんかすっごい名誉な事だって言うのは。

 でもただただ居た堪れない気持ちになる。

 ノリと勢いだけだし、先生だけでも治せればって気持ちだったし。

 感謝される部分なんてイチミリもないですよーって、申し訳ない気分になってきちゃった。


「ど、どういたしまして……」


 ソワソワしていたら中央の王様からの謝罪に移行。

 七国連合の代表でもあるのかな。

 関係性とかよく分からないけど、校長先生が教師の不祥事を謝罪みたいな感じ?


「えっと、あの、謝罪は不要、です。次があれば普通に話をしてもらえたらなって思います」


 あの時は物凄く頭にきたけど怒りは消失しているのだ。

 これもまたノリと勢いで、恐怖が対価になるならその場の怒りも対価に! ってやったせいなんだか、攻撃して治して気が済んだか、どっちだか分かんないけどね。

 俺、ノリと勢いで行動し過ぎじゃない?

 クレメンティア先生は事前に聞いていた通り監視付きで行動中。

 睡眠とか摂ってなかったらしくて、現在仮眠中なんだとか。

 錬金術師あるあるなのかな、研究が盛り上がると寝食を忘れる人が多いよね。


『組合としては遺憾に思うのだが……』


 クレメンティア先生、最初はちゃんと俺の事は内緒で動いてたんだって。

 やっぱり優秀な先生だけあって、製造・複製機の件から自力で音には辿り着いてて、こっそり研究もしていたみたい。

 で、ビアンカさんたちと同じく、魔法が使える人が普通に使った方が安全だし早いって結論は出してたんだって。

 ただ、今回の俺の演奏を見て、全然違うってなったのと、魔法の種類が問題だった。

 時間の逆向。

 それが道具で発動できるならば、今後は災害を恐れない世界になる、などとおっしゃっていたらしい。

 やっぱり普通に話をしてくれれば協力したのになぁ、そんな内心をイーダに、


『……クレメンティア先生がイブキの考えなしを把握していなくて本当に良かった……』


なんて言われて、ああ、やり過ぎると廃人になるかもしれないんだっけ、とビアンカさんのお叱りを思い出す。

 会議の方は難しい単語が並んでて話が頭に入って来ないし、そのままイーダに聞いてみた。

 でもさ、大規模災害が起きた時に何事もなかったみたいに元に戻せる魔法って事でしょ?

 それ、出来た方が良くない?


『研究を進めて成功すればいいけれど、成功せずにイブキが廃人になった場合は全て無駄になるよ』


 あー、無駄死にだね。


『そう。それならもう手が付けられない状況で、一度だけイブキにお願いをする方が確実だと思われているんだろうね』


 確実な一度の方が可能性は高いって事?

 まぁ、被災地を目の前にお願いされたらやっちゃうとは思うけど。

 俺で何とかなるならそれで死んじゃっても仕方ないかなって思うし。

 一人の犠牲でみんなの命が助かるとか、そういう英雄譚? カッコイイとは思うけどね。

 最終兵器っぽくて。

 元々の俺もそうだったのかな? どうなんだろ?

 悩むか悩まないかの違いで、結局はやるのかな。多分だけど。


『それが私だったら、止める? 見送る?』


 あー、止めたいのに止められないみたいな、気持ちになりそう。

 葛藤とか? そういうの。


『残る側はね』


 顔があれば苦笑いを浮かべていそうなイーダをそろっと撫でて、会議に意識を戻す。

 ビアンカさんも音の事は自国でこっそり研究してて、その報告は前の会議で済ませたそうだ。

 シャチ背負ってカリンバ弾いて。

 こっちではエルンストさんがシャチ背負ってカリンバ持って。

 シュールだなぁ。

 あ、俺も今背負ってたっけ。

 説明でも小さな事故が~とか言ってるけど、実際にマルレーネさんもケガをしたらしい。

 今まで話に出てこなかったんで気にしてなかったんだけれど、かなりの重症だって。

 クレメンティア先生……。

 おかげでなのかな。

 ビアンカさんからの危険性とか、徹底的に規制したであろう話と合わせて、話はすんなりと公表はしない方向へ。

 だけど秘密結社みたいな部署を一個作って細々と研究はする流れだな。

 入るか聞かれたけど即お断り。

 王様たちは元々一般人で、旧王族のやり方を一掃しようと立ち上がった人たちだ。

 だから今までみたいに強制はしたくないって、ちゃんと俺に聞いてくれるからありがたい。

 対価に感情をって件はカトリンさんから一つ前の会議で。

 さっきイーダと話していた様な内容が話されるわけでもなく、こちらも秘密結社で細々と。

 成功例を見てないなら難しいんじゃない? とか思っていたらまた聞かれた。


『ベンヤミンの入所を考えているが問題はないかね?』


 ああ、それなら成功例も見てるし、興味を持って突っ走らないし、怖い事を怖いと思えそうだから安心ですね。研究者としてどうかは分からないですけど。


「問題ないです。監視付きならクレメンティア先生にやってもらっても構いませんよ? 俺を脅迫とか拉致とかしないなら。見えるところでやってもらわないと自爆しそうだし」


 俺の提案は喜ばしい内容だったみたいで、すぐに多数決で決定。

 ビアンカさんだけ手を上げる時に条件付けを希望って言ってて、この時は詳細は別の会議でって話が流れたんで後で聞いた。

 条件は、精神に異常をきたす可能性のある対価に手を出さない、と、俺との絶対接触禁止、と、俺の件の正式な処罰、だって。

 会議の最後、


『この世界が終わりそうな時、我々は君に助けを求めてもいいだろうか?』


そう聞かれてちょっと困惑した。

 とんでもない過大評価じゃない?


「国単位で大変なら聞いてください」


 聞いたら内容に関係なくホイホイ引き受けちゃうでしょうって目がいくつか刺さってますけどね。

 そんなにたいした事じゃないと思うんだ。

 さっき先生から言われた内容が浮かぶ。


 研究をする為の好奇心も、期待も、落胆も、研究を進めれば進めるほど失うでしょう。

 成功しても喜びはなく、失敗しても悲嘆もない。それは生きていると言えるのだろうか?


 ねぇ、先生。なくなって終わりなのかな? それって続かないのかな?

 右手と同じだと思うのだ。

 ザラザラした感触も、ふわふわした感触も、目を瞑って触ったら区別がつかなかったのに、いつの間にか分かる様になった。

 粒々には悪意なんてカケラもなくて、その時ダメそうな物を対価として引き受けてくれると感じたのだ。

 それこそ直感で、確信的に、実感として。

 だから俺の恐怖の感情はこれからちゃんと育つんだと思う。

 元の世界で恐怖でも、この世界では不要な恐怖とかもあって、やり直すのは悪くないんじゃないかって、思うのだ。


「俺が大丈夫なラインまでなら全然手伝うので」


 せっかく笑顔で言った俺に、背中のシャチさんが水を噴き出した。

 ああ、コイツ、大丈夫なラインを超えて手伝ってくれるんだな、などと全員思ったとか思わなかったとか。

 そんな事ないのになぁ!




***


お読みいただきありがとうございます。

次回更新は1/15を予定しております。

引き続きお付き合いいただけましたら幸いです (^_^)

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