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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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94 気付かぬまま


 事情を聞いた偉い人たちはその場で即簡単に事情確認。

 当然内緒は内緒のままにはできず。


「イブキとの口外しないって約束はイェンスが破ったんだよ」


 音の事かな?

 いちいち嫌な言い方するなぁ。

 イェンスさんは約束は破ったかもしれないけど、俺を守ろうとしてくれたんだと思いますよ?


「新しい技術の情報は確立するまでは秘匿って研究者として常識だと思わないか?」


 ここら辺から小難しい単語が並んだんで子どもにも分かる単語でお願いする。

 俺の翻訳機を回収したのはそっちなのでそこは頑張って?


「話さないなら偉い人たちで話し合うから大人しく待ってろって」


 急に雑になったな!

 クレメンティア先生もセバスチャンも、俺が起きてから話し合いをするまでは話せないと主張。

 だから状況説明に連れていかれたのはイェンスさんとベンヤミンさん。

 ゲルハルト医師は実験場に並んだ回復した人々の対応。

 現場ではカトリンさんは巨大化して俺を抱え込んでるし、カリンバを使ってもっと実験をしたいしで、


「早々に箱を運び出して貰ったよ」


だってさ。

 それでがらんとしてるんだな。

 何度か小爆発を起こしている内に、ベンヤミンさんから話を聞いた偉い人たちが来て。

 やっぱり俺を確保しておきたい気持ちになってたんだって。


「とにかく一度イブキを解放して貰おうとカトリンさんを説得し始めたんだけど、聞いてくれなくて」


 カトリンさんが反論するみたいにガサガサと枝を揺らしているけれど、この場に言葉がわかる人はいない。

 待てよ?

 クレメンティア先生って通訳機持ってるはずだよな?

 近づいて耳を見てみるけれど装備されていなかった。


「クレメンティア先生、通訳機どこですか?」


 返事はしてくれない。

 仕方がないのでクレメンティア先生を持ち上げてあちこち探してみる。

 苦しそうに呻き声を上げるけれど、ダメならどれがそうだか言えばいいだけだ。

 言う気がないんじゃ仕方がない。

 イヤフォンじゃないなら骨伝導かな?

 でも音漏れにも気が付かなかったし……。

 あ、口の中?

 悲鳴とか上げた隙にいけるかな?

 サンポーニャを取り出して一本引き抜き、クレメンティア先生の閉じたばかりの傷に突き立てる。


「ッアァァッッ」


 はい、失礼しますね。

 ガバっと開いた口に手を突っ込んで口の中を確認したらありました。


「いってぇ!」


 歯が尖ってなかったんで油断してたらすり潰されそうだ。

 慌てて上の歯にはめ込まれたそれを引き抜きながら、ついでに口からも手を引き抜こうとするけど失敗。

 ザリザリと噛みつかれている。

 押してダメなら引いてみる、の逆だ。

 小さな口内でグッと手を握って押し込む。

 おえってなって、あっけなく口は開いた。

 手の皮がベロベロに削れてめちゃくちゃ痛いんだけど、カトリンさんの削れっぷりはもっと酷い。

 持ち上げていたクレメンティア先生の体を放り投げ、耳の後ろに通訳機を押し当てつつカトリンさんに駆け寄った。


「すみません! これでようやく何を言ってるか分かる! 大丈夫ですか?」


 ガサガサガサッと枝を揺らしてカトリンさんは葉を落とす。


「可哀そうな子。優しい子。可哀そうに」


 涙、なのかな。

 ウーヴェと同じで、少しズレてる感じがする。

 それなら安心。

 だって少なくとも小人族は敵にも味方にもならないのだ。

 敵でも味方でもないなら、カトリンさんは俺にとって味方だと思う。

 話を聞いてみると、俺はまだ意識が戻っていなくて、戻るまでは待てと伝えたんだけど、聞いてもらえなかったんだって。


「ちょっと! セバスチャン、さん! そもそも俺の意識がなかったって言ってますよ?」


 大きめの声で話しかけると、セバスチャンの体が微妙に動いた。


「セバスチャンでいいよ」


 小さい声だったけれど、部屋が静かなので問題なく聞こえる。

 なんだか説明してくれるんだけど、また難しい単語が増えてきた。


「すみません、簡単にお願いします。身も蓋もなくていいので」


「イブキの意識はない方が良かったんだよ。一度目は何もしなかった。二度目は皮を剥いだ。三度目は斧で切り込みを入れてみたけどダメだった。四度目に監視の目をかいくぐってマクシミリアンを人質にクレメンティア先生と二人で来たんだ。そうしたらイブキが降りてきた」


「……二人でとか人質とか関係ないっすよ……そもそも俺もカトリンさんと話できないし。普通に三度目のチョイ前まで意識なかったし」


「どうして三度目に降りてこなかったんだい?」


「声は出ないし事情は分からないし、カトリンさんは出るなって感じだったんで」


「そう。役人もいた。イブキが捕まると思った」


 とカトリンさん。

 説明によると三度目は、例の警察っぽい組織の人たちがそれまでよりも多めに来たんだって。

 セバスチャンたちはやんわりと連行。

 ついでに置きっぱなしの荷物も持って行った。

 カリンバのせいかな、俺の荷物にも興味をもたれちゃったんだろうね。


「そう言えば話せてるね? 皮膚を爛れさせる薬液を流し込んだんだけど、効きが弱かった? 例の道具も声もだせなかったのにどうやって治したんだ?」


 さすがにちょっとイラっとするな、この研究バカ。


「内緒です。それよりも、監視の目をかいくぐってって?」


 やんわり連行って、事情聴取とかだろ?

 ひと段落ついて隙をみて脱出?

 そもそもそこまでは監視も厳しくなかったの?


「ああ。キベン国から苦情が入って騒がしくなったんだ。まだ揉めてるんじゃないかな? 向こうもイブキを解放しろって話だと思う。話がまとまる前にイブキに研究の協力を了承して貰えたら良かったんだけれど」


 この二人はそんなに研究をしたかったのかな?

 セバスチャンは塔、クレメンティア先生は通信部門、それぞれすでに決まった仕事があるのに。

 でもまぁ。趣味的に時間を作って研究するのは可能かもしれないけれど、専属で研究はできないか。

 別の錬金術師に譲りたくなかったんだな、きっと。


「すると思います?」


「そのためのマクシミリアンだろう? まさか無力化されるとは思わなかった」


 するだろ、無力化くらい。


「やっぱりビアンカさんが荒ぶってるんですね。だと、先生より先にエルンストさんか」


 ぼんやりと口に出して入り口をみる。

 重たい足音が近づいてきていた。

 姿を現したのはシャチを背負って片手に先生を抱き、片手に俺の荷物を持ったエルンストさん。


「まさかの同時登場……!」


 驚く俺に、


「イブキ、本当に君は心配をさせるな」


とさわやかに笑うエルンストさん、


「イブキ! まだ治してなかったのか!」


の、鳩尾に蹴りを入れて飛び降りる先生。

 エルンストさんは頑丈なので微動だにしなかった。

 その強さ、羨ましい。




***


お読みいただきありがとうございます。

次回更新は1/6を予定しております。

引き続きお付き合いいただけましたら幸いです。


本年もどうぞよろしくお願い申し上げます ^^

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