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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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82 心配が先だって怒られなかった事案


 ええっと?

 電話をした日から指折り思い出す。

 一日目。

 そもそも連絡をする予定になかった。

 二日目。

 帰りも遅くなったしそれどころじゃなかった。

 三日目。

 頭がちょっとアレだったし出かけてた。

 四日目。

 倉庫造りで車からは出たり入ったり。夜は眠気の限界を迎えて風呂にも入らず寝た。

 五日目。

 倉庫の外側が完成したんで、小人族の人たちとイーダの荷物を運んだから出ずっぱり。

 ちなみに棚なんかを作って、まぁこんなもんで完成じゃね? ってなったんで宴会になったから車に戻ったのは深夜。

 六日目。

 宴会の時にも錬金術師に需要がありそうな感触だったんで、街まで出て水の国の住人さんに聞き込みと宣伝。

 その帰りに小人族の村に寄ってイーダの家のお礼に欲しい物があればって聞いてみた。

 で、材料に石が必要だったんで車ごと移動して、ついでにその場で作業して一泊。

 キャンピングカー生活の良い所だよね。道路とか駐車場とか規則がないってのがデカいけど。

 七日目。

 昼過ぎに起きて、小人族の村に届けに行ったら、ひょっとして直せる? って出されたジューサーがまさかの錬金術製だった。こっちでも意外と使われてるんだな!

 中央だと複製・製造機で完結するんで、ジューサーとか個別の商品は扱ってなかった。

 だから設計図もない。

 複製・製造機なら種とか皮が燃料になるから永久機関みたいになるし、それじゃダメか聞いたらダメだって。

 使い勝手云々よりも、要するに今の生態系を変えたくないって話みたい。

 果物の種とか皮は次の栽培に必要だからわざわざ集める場所があるんだもんな。

 俺なら便利な方へ流されちゃうから、ちゃんと考えて踏みとどまってるの凄いなって感心した。

 物系の設計図だしビアンカさんに聞いてみようかな? て思って、思い出しました。

 まぁ。慌てたよね?

 大急ぎでビアンカさんに伝えてある座標、つまりはイーダの倉庫の近くへ帰って来たのは夕方頃。


「イーブーキー」


 俺の顔を見るなりがっくり地面に崩れ落ちたのはエルンストさんでした。

 なんかすんません。

 取り急ぎビアンカさんに電話。

 本人はお仕事中で出なかった。

 今日はもう絶対に電話に出るので、都合の良い時にかけてください、と伝言を頼む。

 エルンストさんの話を聞くに、五日目辺りで心配メーターを振り切ったっぽい。

 見に行って来て! ってなったって。

 マティルデさんからも大量の保存食を持たされて、宅配便の車みたいなヤツで一人で駆けつけた、と。

 したら、車ごと無かったってオチね。


「昨日は電話の呼び出し音すら鳴らなくなるし、到着の連絡を入れた時は大変だったよ……」


 重ね重ね申し訳ない。

 ゴーカートじゃ石が運べなかったんですよ。

 すっかり敬語も消失しているので、ついでに言葉遣いはそのままでお願いします。

 車を停めなおして、先に電話の呼び出し音を車の外にいても聞こえる様にスピーカーを設置。

 保存食を車に運び込みつつ今日までの話をした。

 エルンストさんは興味があるのかないのか分からない、非常に軽い反応で話を聞いてくれる。


「帰りたい、帰りたくないって話ならそりゃ帰りたいよ?」


 考えてなかっただけで、考えたら帰りたいな、とは思った。


「でも無事に帰れないと思うんだよね。元の世界に魔法はないし、堕ちたら死ぬし、堕ちた場所が悪くても死にそう。って考えると、こっちで生きたいか、向こうで死にたいかって話なのかなって」


 極論だけど。


「ああ、話が早い。それならこちらで生きて行けばいい」


 ……まぁ俺がエルンストさんの立場でもそう言うな、きっと。


「それはそうなんだけど。正直、家族のためだけなら、向こうで死んだ方が物事がすっきり終われていいのかなってのも頭を過ってさ。どこかで元気に生きていて欲しいって、願い? 期待? それを信じ続けるのって辛いかなって」


「すっきり終われる……食料か今後の実験用?」


「悪かったよ、常識が違いすぎた……」


 まぁ、なにかの間違いで死ななかったとして、こっちみたいに首から下を挿げ替えて元通りって医療もない。空白の一年ってのもある。考えれば考える程、家族に迷惑をかけるのは避けられないのだ。

 命をかけてまで帰りたいのかと聞かれれば、いいえ、だ。

 死にたくはない。こっちで生きて行ける道も見えてる。

 でも、と。どうしても消せない、後ろ髪を引かれる? だっけ?

 そういう感情部分であっさりと壊れかけたってだけの、ただの俺の弱さの話。


「気持ちが病気ってなんて言うんだろ?」


 翻訳機無しで喋ってるから久しぶりにこういう疑問も沸く。


「病気? 悩み事の事? 病気でやる気が出ない、のは当たり前か……」


 どうやらこっちに精神病は無いらしい。定義付けしたらあると思うんだけどな。


「泣きっぱなしとか」


「泣いて気が済むならそれでいい。原因は特定すべきだけど」


「突然暴れ出すとか」


「空腹で住人が食材に見えて暴れた話はたまに聞く」


「……飯関係はどうでもよくなんの。なんなら食えないの」


「長期睡眠の種族にいるな。……さっきから本能的な話で気持ちとは関係が無くないか?」


 これは分かり合えそうもないな。

 イーダに説明をバトンタッチして、夕食の準備しますね、と家事室に逃げる。

 自分のダメな時の説明とか聞いても恥ずかしいだけだからな。

 夕飯でも心配されたり安心されたりしながら話し終えて、まだビアンカさんからは連絡がなかった。

 忙しいらしくて、俺から連絡がなかった間も時間が遅すぎるからと自分からはかけなかったみたい。

 四日目から五日目の昼まではガンガンかけてたらしいけど。

 着信履歴か留守電? それこそ携帯電話? 時間が気になるならチャット? 改めて考えると色々便利だったんだな。

 元々あんまり人に連絡って取らなかったから気が付かなかった。

 疲れているだろうしと、エルンストさんに風呂に入ってもらい、ソファで眠れるように装備を整える。

 それから洗濯とか作る予定リストとか試作したいリストとかを書く。

 ビアンカさんや先生と住んでいた時は時間がある程度決まっていたからちゃんとしてたな。

 ここ何日か朝まで起きてて昼過ぎまで寝てる。

 ある程度は時間割を決めた方が良いのかもしれない。

 エルンストさんが風呂から出てきたので、交代して俺も入る。


「イーダの飯兼ねてるから風呂が長いかも。電話鳴ったら出ちゃってください」


「え?」


 驚かれて思い出したんだけど、最初は俺も超恥ずかしかったんだった。

 慣れって怖ぇな。

 どうも俺とビアンカさんのタイミングは完全にズレているみたいで、風呂に入っている間に電話が来てた。

 エルンストさんが一通りの説明を済ませたところ。

 俺はごめんなさいから伝え、ビアンカさんは無事を喜ぶ言葉で返してくれた。

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