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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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78 ただいま水の国


 運転手が俺一人だからのんびり移動して水の国に着いたのは三日後。

 まだ手や足が震える時はあるけれど、気持ちは落ち着いている。

 水の国の国境門でシャチに抱き着かれて、なんでだかちょっと泣きそうになったのは内緒。

 そこからイーダの家までなんと丸一日。

 え? セイウチめちゃくちゃ早かったよね? 道のせい?

 隣でナビをしてくれてるイーダに聞けば、


『下りだったし、道のせいもある。ただ……速度が、ね』


と歯切れの悪い返事。

 必死だったからあんまり覚えてないけど……そうか、必死だったんだよな。

 倍以上のスピードだったのかも……。

 ホント、よく今日まで生きてたな、俺。

 イーダの家の周りは木が多くて、少しだけ離れた場所に車を停めた。

 今日からここが拠点になるからまずは電話を設置して座標を確認。

 本当なら塔に行って、錬金術師組合のバッジ用に座標を更新する必要がある。

 これは事前にビアンカさんにお願いしておいた。

 電話をかけて到着と座標を伝え、ついでにまだ震えが残っている事も報告。

 疲れているのでまた明後日くらいに電話しますと言って、早々に電話は切った。

 先生のところにも電話しなくちゃだしね。

 先生も今日は忙しかったらしくて疲れていたみたい。

 座標を伝えられたので、お互いにまたなにかあればと言い合って電話を切った。

 面倒だったのでこっちの栄養補助食品みたいな夕食を食べて風呂の準備。

 そのタイミングでイーダがやってくる。

 もう普通だな。一緒に風呂に入るのが日常化してる。

 お互い風呂に入る目的は違うけど。

 移動中に話し合ったんだけど、これからイーダは俺と車で暮らす事になった。

 人間みたいに荷物も多くないし気軽な感じ。家も残ってるしね。

 絶対俺の監視も含まれてる気がするけど、俺も寂しくならないし、持ちつ持たれつかな。

 イーダの家は少しセキュリティレベルを上げて倉庫にする予定。

 なにせ今は布製だ。

 木か石か、可能なかぎり自然に近い状態にしたいみたい。

 車の中は例の照明のおかげで暖かいけれど、外は少し寒い。

 防寒用の服も作らないといけないな。

 新しい生活の始まりはなにかと忙しくなりそう。

 翌日は朝から防寒着作り。

 それこそ太陽が出ないから気温て変動がないんだけど、体が冷え切ったらそのままになっちゃう。

 中央の暖かさに体が慣れちゃってたからか、寒さが気になって気になって。

 毛布用の生地で外出用のポンチョとカーディガン、部屋着用に着る毛布をイメージしたガウン。

 カイロ替わりの熱光石を入れるポケットも付けてみた。

 ちょっとモコモコするけど暖かさは問題なく、なんなら寝られそう。

 思ったより時間を食ったので昼を食べてから次の用事。

 ゴーカートを出して、ウーヴェに会いに行く。

 家じゃなくて、俺が最初に遭遇した場所の方が近いからそっちから。

 あ、居た!

 でもさ。


「○%:♭!▲×&☆□!」


 相変わらず何を言っているのか分からなかった。

 そう。ウーヴェって中央語話してなかったんだよ。

 思い返してみたら製造・複製機の実験の時に小人族の人がいたけど、何を言っているか分からなかったのだ。

 だけど問題なし!

 俺には翻訳機がある。

 小人族の辞書はあったので、中央国語には変換できるのだ。


「ウーヴェ! 久しぶり!」


 スピーカーから翻訳された小人族の言葉が流れて、ウーヴェは左足をカツカツと鳴らして言った。


「誰?」


 あ、うん。そんな気がしてました。

 言葉が分かった事と通じた事が嬉しかったのでたくさん話をする。

 イーダの家の相談とか、錬金術師になった話とか、内容は色々。

 小人族の言葉はぶつ切りの単語が並んでるだけだった。覚えたら直接話せるかも。


「木、作る、良い。乾燥木、こっち」


 テレパシーって凄いんだな。

 前は普通に喋ってるみたいに聞こえてたよ。


「繋ぐ?」


 イーダも小人族語で話してる。

 これはこれでなんか面白かったので首を振った。

 ダメだ! ってなったら頼もう。

 一緒にイーダの家の戻って、サイズとか、必要な木の量とかを確認。

 ウーヴェの家も、枝を落として整えただけの木で作った箱みたいな家、だったからそんな感じになるんだろう。

 雨対策に天井に防水液を塗った方が安心かな、と思ったので、俺は薬液を錬金する予定。

 素材は、それこそ俺が堕ちて来た辺りの地面を掘ったりすれば手に入るらしい。

 人が堕ちてくるんだからそりゃ隕石だって落ちてくるよね!

 イーダと家を解体して荷物を一ヵ所にまとめたりしている間に、ウーヴェが別の小人族の人と材料を運んできてくれた。

 あっという間に夕食の時間だったので、ウーヴェのお土産にしようと用意していた酒樽を車から出してくる。

 ビアンカさんに用意して貰ったんで品物は良いと思うんだけど、小人族の口に合うのかはちょっと心配だった。


「旨い!」


 とその場でクルクルと三回転。多分凄く喜んでくれたのかな?

 バレリーナみたいな軽やかな回転のはずなんだけど、なんか駒が回ってるみたいで楽しい。

 小人族同士で軽く体当たりとかもしてた。

 相変わらず色々謎だけれど、宴会みたいな大騒ぎは、俺を受け入れてくれてるみたいで嬉しい。

 残りの酒樽を転がしながら帰るウーヴェたちを見送って、イーダと風呂に入って寝る。

 翌日から家作り。

 っていうか、眠くなったら寝る生活だからか、俺が寝ている間に小人族の人たちが来てました。

 丸太の端に凹みを作って、そこにはめ込んで重ねるとかで、せっせと丸太を加工中。

 火の魔法なのかな? ボウっとオレンジ色の火の玉が綺麗な溝を作っていく。

 髭の中から工具を取り出したり、背中で丸太を移動させたりと、うっかりガン見してたらイーダに巻き付かれた。

 一緒に作業したい気持ちもあるんだけど、そこは役割分担だと言われて車に戻る。

 生活。生活をしなければいけません。

 製造・複製機にパンの材料を放り込んで、ハムとチーズとシロップ漬けにした果物を準備。

 サンドイッチにして昼の分もまとめて作った。

 朝飯分食べたら、倉庫から防水液用の素材を取って錬金部屋へ。

 持ってきた素材で屋根分は足りるけど、在庫は減るのでちょっと心配。

 素材が拾える辺りに行ってみようかな?

 考え事をしつつ、給食のシチューが入ってた鍋みたいなので五個分。

 こんなもんかな。

 よっこいしょっと、車の外に運んで、いい運動にもなりました。

 小人族の半分が地面に転がってお昼寝中。

 風邪ひかないでね?


「素材が拾える場所ちょっと見て来てもいい?」


 イーダに声をかけたら一緒に行くと言う。

 家主が現場に居なくていいの? と思ったらウーヴェまで一緒に行くと言い出したので、他の小人族の人に声をかける。


「注意」


 注意? ああ、気を付けろって事か。

 よろしくお願いしますと告げて、ゴーカートに乗り込んだ。

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