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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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67 元の世界だと国家試験合格が必要な職業なんだと思う


 新しい国単位で旧王宮に錬金術師が呼ばれ始めたのは翌週から。

 電話と製造・複製機の対応が急務だからってのと、錬金術師組合みたいなのを作るから登録しろだって。

 来ないとヤブ医者ならぬヤブ錬金術師扱いされますよって注意書き付き。

 どゆこと?


「住人にもメンテナンスが必要な旨は公開されますね? 持ち込まれた時に対応ができなければそう思われても仕方がないとは思いませんか?」


 先生から冷ややかに説明されました。すんません。

 先生には俺が教えちゃってるんであんまり行く意味もなさそうだしね。

 ただ、錬金術師組合に入っとかないと今後困るかも、って事で向かっております。旧王宮。

 滞在中の他国の錬金術師にも声をかけてとあるので、俺も先生の家からの参加。

 ビアンカさん呼び出しにしちゃうとまた面倒だからと、直接電話で言われた。面倒なんですね。

 会場は学校の教室みたいな感じだった。

 この前最終的に実験場に集まった錬金術師と同じ程度の人数だから、少ないのかな。

 三……四十人いないくらい?

 先生に聞いたら元々王族から嫌われている土地だったからこんなものらしい。

 錬金素材の調達も難しい土地なんだって。

 なんだってそんな場所に住居を? って思ったんだけど、そうだった。先生もごたごたで越して来てたんだった。

 素材に困らなかったのは全身タイツ部隊にお願いしてて、正規ルートでの入手ってしていなかったからなんだな。


「マクシミリアン、久しぶりだな! こっちに越してきてたのか?」


 先生の顔見知りもいたみたい。

 近況報告なんかを交わしていたら、本日の説明係のセバスチャンって錬金術師さんが入って来た。

 こないだ倒れて笑われてた人で、そういうキャラなのか進行が和やか。

 急ピッチで新しい国のための準備が進んでて、錬金術師の出番も多いので協力よろしくって話から始まった。

 先行して俺や先生、ここで働いている錬金術師が作っていた固定電話と製造・複製機の設計図が配られる。

 制作方法や流通、今後の対応なんかの話。

 いくつか質問が飛んで、電話も試しに使って、製造・複製機の虫の入れ替えも体験してから昼休憩。


「うーん」


 椅子から立ったところで先生と二人で伸びをする。一緒に住んでると行動が似るよね。

 目新しい錬金の話もなかったので、ご近所さんの製造・複製機をどの順番でどうするかって話をして過ごした。

 早めに戻って別の錬金術師さんと雑談。

 さっき先生に話しかけてきた錬金術師さんは先生と同じ分野の錬金術師さんで、なんと同じ分野は他に三人だけだった。

 なんとなく近くの席に座ったけれど、雑談内容はさっぱり分からない。

 普段先生が手加減して話をしてくれているのがよく分かる。

 午後は難しい話が多め。

 今後、七国同時依頼とかもあるので、最低四国の承認印がないと依頼と認めない様にとか、そういうの。

 俺も覚えとかないとダメっぽい内容だったんで真面目に聞いてはいたけど、忘れそう。

 小冊子みたいのはもらえたんで、帰ったらゴーグルでいつでも呼び出せる設定にしよう。

 そういえば翻訳用の辞書も最近更新をサボってるんだよなぁ。

 なんとかメモは取ってるけど、走り書きが多いからもう一回確認しないとダメな言葉とかありそう。

 考え事をしてたら話がどんどん進んでる!

 え? なんの話? 進行が早い上に質問内容すら意味が分からない。

 大学の授業に小学生が参加している気分。

 後で先生に教えてもらおうっと。

 ちなみに他国から来た錬金術師は俺の他にもう一人だけいた。

 軟体動物っぽい人で、火の国の人らしい。

 銀行みたいのを設立して塔と役所に置くよって話の時、塔で現金を預かってくれるなら楽だと喜んでいた。

 水の国と一緒で火の国内ではほぼお金って使わないんだって。

 塔と、旧王宮に作る七国連合とかいう組織の職員募集なんかもあった。

 常駐して施設内のメンテナンスと隕石素材の販売が主な業務。

 その替わり研究室を作るので、何人かで研究をしたい人にはおすすめらしい。

 常駐したくはないけど研究室に遊びに行ってもいいのかって質問が飛んだ時はちょっとドキドキした。

 楽しそうだから遊びには行ってみたいよね!

 守秘義務が発生するからって即却下だったけど。残念。

 最後に錬金術師登録をして、組合員証を貰う。

 十円玉サイズのピンバッジ。昔の錬金術用の先が螺旋になってるペンが隕石に突き立ってる模様入り。

 見えるところに着けろっても着替えるしなぁ、なんて着けるところに悩んでいたら、


「あら、可愛らしい」


と、隣に座ってた錬金術師さんが耳にぶっ刺してた。

 ピアスにしちゃデカいんじゃない? 消毒とかしなくていいの?


「金属板に穴を開けて取り外し可能な状態を作り、それを邪魔にならない装飾品に加工が妥当では?」


 ボソッと後ろから突っ込みを入れてる錬金術師さんに賛同。

 帰宅したら考えよっ。いったん胸元に着けて先生と二人会場を後にする。

 ここは七国連合の拠点になるんであちこち工事中なんだけど、シンボルがまんま芽吹きの指針のやつなんで居心地が悪い。

 早く帰りたいんで用事も早く終わらせようと、先生を抱き抱えて移動。

 医局で血液量検査と、今後の製造・複製機の虫の入れ替え作業用に造血剤をもらわないといけない。

 先日医局から拉致されたイェンスさんは前からお世話になっているビアンカさんの友だちの人で薬系錬金術師さん。

 この国の言葉が耳に馴染んだのか、ようやく名前が聞き取れた。


「良かった。血液量は戻っているよ。引き続き作業頑張ってね」


 苦笑いを浮かべて造血剤を渡してくれて、血液量から個別に作業の注意事項。

 先生は一日五台が健康被害を及ぼさない台数で、俺は二十台まで。

 一応倍は行けるらしいけど、その場合は薬を飲んで一週間はお休みした方がいいらしい。

 俺が突撃訪問して、先生は持って来た人の対応の予定だったんだけど、思ったより先生ができる台数が少なかったな。


「家が近い錬金術師と連携を取って上手く回すしかないね。三日後には組合員証に今日の参加者の電話座標が反映されるから連絡を取るといいよ」


 とイェンスさん。

 え? なにその機能?


「はぁ? さっき説明を受けたろう?」


 先生がびっくりして俺の肩をバシバシ叩く。


「えー、言ってました?」


 聞いてなかったかも。

 イェンスさんまでびっくりしている。


「……もしかして大ケガの時に脳に障害が?」


 その節は本当にお世話になりました。

 俺の無能っぷりを病気と思うの止めてもらっていいっすか?

 これくらいの聞いてなさならデフォなんで。

 そんなに驚く話じゃない、よな?

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