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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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61 根には持ってました


 魔法を使える人なら魔法の種類は選べないけれど使える道具?

 うん、それなら魔法を使うよね?

 先生も、イーダも試したけれど、使えても思い通りには動かなかった。

 良い点は使えない種類の魔法が使えるかもしれない事、だって。

 かもって。

 なんとも言えない微妙な空気の中、それでもある程度の結論は出しておかないといけない。

 で、音楽で魔法が出る謎は要研究だけれど、他言無用。

 この世界に音楽は広めないって話になった。

 危ないからね。

 その内謎が解明されたら娯楽の一つとして広めたらいいのに、とは思っちゃったけど。

 歌うのも演奏するのも得意ではないけど、聞くのは好きだったから。

 それならイブキが解明して広めればいいって先生はいうけれど、全然解明できる気がしないんだよなぁ。

 俺には無理な気がする。

 それにしても。

 暖簾に腕押し、糠に釘、豆腐に鎹。

 暖簾も糠も豆腐も通じないよな?

 仕切り布に腕押し? こっち硬い布もあるしなぁ。

 あ、無用の長物? 別に長くないけど。

 長くなくてもいいの?

 ……こういう疑問が解決する日は来るのかな?

 俺の語彙力でなんとか翻訳機は作ったけれど、完璧じゃないんでちょいちょい勘違いもする。

 関わる人数が増えると訂正されずに流されちゃうとかもあるから、自分で気を付けないといけないんだけど。

 魔法の揺らぎだって、どんな見た目か聞かなかったから原子とか分子の話だと思っいこんじゃってたし。

 虫。

 虫かぁ。


『イブキ?』


 ポカンと口を開けて考えていたので、イーダが口に入ってきた。

 疑問形で声をかけたってこれじゃ返事できないじゃん!

 イーダって咀嚼して飲み込んでも大丈夫なんだっけ?

 俺の腹とか。


『ごめんごめん』


 本日は通常業務。

 今は休憩中。

 いくら俺でも作業しながらぽけーっとはしない。

 午前中の制作品は改良に改良を重ねた固定電話改。

 塔の座標で設定する形になったんで、今は塔を中継すれば移動しながらでも使える様に改良中。

 そっち系に強い錬金術師と職人さんが通信部門みたいのを立ち上げて対応してくれてる。

 今後のためにと発案者として俺の名前も入れてくれたんだけれど、もう俺には分からないところまで進んでたね。

 金銭的な問題とかは取りあえずみんなで一年は我慢しましょうって話だから把握できてないんだけど。

 ビアンカさんが言うには、特に仕事をしなくても生きて行けるらしい。

 そんなビアンカさんはますます忙しくなり、また同居するなら覚悟を持ってきて欲しい、と言われた。

 小国のとはいえこの先は女王様である。

 お抱え錬金術師みたいな扱いで、研究所とか部屋とかも用意するなんて言ってくれて。

 有難かったけど、当の本人は錬金術師としてはもう無理だろうと少し寂しそうだった。

 それでも趣味で色々作りたいし、錬金術は辞めないわよ? と笑っていたけれど。

 考え込む俺に、こちらに残っているビアンカさんの家に住むのもありだと提案もしてくれた。

 けど、それなら先生の家がいいかな。

 寂しいし。

 先生は引っ越さずにこのままここに住むみたい。

 この周辺の王様は全身タイツ部隊の中から投票して決めるらしいから、悪い街にはならなそうだしって。

 それでもいいなら住んでも良いってお言葉は頂戴した。

 イーダも五年に一回は顔を出すから、たまに会えるね、なんて言ってたけど。

 五年に一回って。

 長命種は気が長いのかな。

 なんか時間の感覚とかが違うのかも。


『これから配達だろう? 付き合うよ』


 そんな風に過ごしていたら、あっという間に一ヶ月が経っていた。


 本日の俺は一日籠城です。

 中央国の王様だった人と一部の上層部が公開処刑される日。

 元王宮の門前で、式典も兼ねるらしくて、数日前から国中がそわそわしてる感じ。

 俺にはちょっと刺激が強すぎたので、耳に入らない様にして貰った。

 話さないで、聞かせないで、ほとぼり冷めるまで外出もしないから!

 とか。

 結構必死で訴えかけました。

 先生まで出かけて行ったのは少し意外だった。

 なにか思う事があるのかな。

 先生とはそういう話をしてないけど、作った作品が捨て駒的に使われたとかはあるんだと思う。

 ビアンカさんもマティルデさんたちと師匠さんが親子みたいで羨ましかったって言ってたし。

 イーダもこの世界の節目になる日だからと一緒に出かけて行った。

 ご近所さんにも家に居るって人はいたから、先生がイブキをよろしくって声をかけて出て行ったけど。

 過保護すぎない?

 玄関先でゴーカートの整備をしていたら、いつもは朝の八時と夜の八時になる鐘が正午に鳴った。

 式典開始の合図だ。

 空になにか上がるらしいので、想像しない様に家に入ろうと工具箱を持ち上げる。


「……」


 視線を感じて振り返ればドミニクが立っていた。

 じっとこちらを見たままなにも喋らない。

 クチバシのあった部分はまっ平に、舌が少しはみ出していた。

 ああ、歯とか、無かったんだな。

 

「入れば? クチバシできてる。つけていきなよ」


 玄関の扉を開いて声をかければ、おずおずと後ろを付いてきた。

 そのまま工房まで入って、椅子を引いてやる。

 なにも言わないのだから俺からなにか言うのもどうだろうって、ただの意地かもだけど。

 保存瓶に入れたドミニクのクチバシは綺麗に治っている。

 何なら元よりも綺麗かもしれない。


「自分で、しっくりくる場所に固定して。そのまま持ってて」


 本当はクチバシを医者に納品して着けてもらうんだけど、今は誰もいないし。

 我ながら不機嫌な声が出てるな、とは思ったけど、そのまま続けた。


「目を瞑って。少し時間がかかる。そんで、誰にも言うなよ?」


 ドミニクは困惑しつつも指示に従った。

 なにも喋らないのは、喋れないからなのか、何を言えばいいのか分からないのか、どっちだろう?

 カリンバを鳴らす。

 開始の合図みたいになってるチャイムの音ですぐに粒粒が浮かぶから、頭の中で願う。

 クチバシを定着できる分だけ集まったら、痛くてもいいから着けてあげて?

 相談するみたいに粒粒がドミニクの口元に集まっていく。

 あ、そろそろかな?


「……っ!」


 うん。麻酔無し縫合手術だから痛いだろうね?

 でもほら。

 口ピアスとかあるし。

 足首ねじり折られるよりは痛くないと思うんだよね?

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