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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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48 友だち


 火石は使うけど熱光石との合わせ技で効率上げてあんま燃料部分が減らない機構の、ホットプレート? が出来上がったのが先週の事。

 全身タイツ部隊の人たちって半数が塔を使えなくて隕石が手に入らないから大量注文を頂きました。

 もう作り飽きて楽しくもなくなってる。

 先生曰く、それが仕事だ、だってさ。

 言われてみたら先生もビアンカさんも仕事は基本午前中。

 午後は開発とか研究を楽しんでる感じで、あんまり無理な納期設定とかはしないんだよね。

 量産体制をとるにしても権利の登録は王宮案件。今は止めとけって話で取りあえず全身タイツ部隊御用達。


「なぁ、逆に冷やせねぇの?」


 ドミニクって全身タイツ部隊の、多分鳥の血が入ってる獣人が俺の周りをクルクルと回っている。

 先生に工房から追い出されて休憩室で組み立て作業中。


「冷蔵庫に入れろよ」


 そう、冷蔵庫は存在する。

 箱じゃなくて部屋規模だけど。


「そうではなーくーてー! 冷めるのを待つのがダルぅぅぅいの!」


 唇がモロに鳥だからかな? 俺には想像がつかない。


「扇げよ。ウチワ作ってやるから」


「扇ぐのもダルイじゃん!」


「氷石でスプーンでも作ったら?」


「凍傷になるだろ?!」


「えー? 扇風機とかねぇの? こういうの」


 ハンディタイプのヤツを絵にしようとするんだけど、意外と書けないんだよな。

 ドミニクはへたくそだのなんだのとケラケラと笑っている。

 俺から扇風機の説明を聞いて、こっちの世界の扇風機の絵を書きながらドミニクはちょっと眉間にシワを寄せた。やっぱり思い通りには書けなかったみたい。

 四葉のクローバーみたいな絵だから似てるのかと思ったら中心に向かって動くらしい。

 挙動的には蝶?

 この形状なら先生が設計図を持ってそう。


「卓上用で小さいの作ればよくね?」


「あ、いーじゃんいーじゃん。ふーふーして貰ってる感じする」


 そんな挙動なの? ……クラゲの方が近そうだな。

 話にはお互い思い違いは発生するけれど、結構楽しくやっている。

 ドミニクは俺の一個下で、全身タイツ部隊には親が入ったんで入ったってタイプの人。

 仕事は果樹園をやってて、別に王族がどうのとかは考えた事すらなかったらしい。


「えー? 考えない、考えない。産まれた時からそうなんだからそれが普通じゃん? 滅亡しろってほど憎くもないから、たまにシラけんだよねぇ」


「制服ダサいし?」


「え? あれダサい?」


 いや、うん、感覚のズレってのもあるよな。


「それでも、仲間が死んじゃったり、ケガしたりすんじゃん? 生活もビミョーに不便になるしさ。そうすっと、頑張るぞーとか思っちゃって」


 俺が組み立てた商品を箱に入れてくれつつ、さっきより少しだけ大人びた口調で言う。


「親の考えは親の考えで、自分の考えもなきゃダメだと思うのに、なんか流されてんのかなとか、色々思う」


 こっち来てだくだくと流されっぱなしの俺としては耳の痛い話。


「耳が痛い」


 苦笑いして言えば驚いた顔をする。


「え? 大丈夫か? まぁ、確かにちょっとうるさいけど」


「え?」


「え?」


 また思い違いかと顔を見合わせ、どうぞどうぞとお互いの言葉を譲り合って笑う。

 なんかこういう感じ久々だなぁと思いながら、なにがうるさいのか聞いた。


「先生がご遺体バラしてるから物凄い音がしてるじゃん?」


 聞かなきゃよかったな。

 しかも音なんか聞こえてないし。

 ザっと血の気が引いたらしく、あー、ゴメンゴメンと、ドミニクがまた俺の周りをクルクルと回った。


「いい、いい、大丈夫」


「あー。耳が痛いのは? 大丈夫?」


 それは実際に痛いとかじゃなくて、聞きたくない話、とか、痛いところを突かれたとか、説明する。

 お互い語彙が少なくて、雰囲気でなんとなく納得して、ドミニクがちょっと困った顔で笑った。


「イブキはしょーがないんじゃないかー? 人間だし。逆に落ち着いててびっくりする」


「うーん。落ち着いてんじゃなくて、ずっと意味が分かってないだけなんだけどねぇ。意味わかんなくない? 全然違う世界に来ちゃうとか」


「あー、確かにぃ。意味わかんないよなぁ」


 堕ちて来た人間って、ウーヴェも言ってたけど童話みたいなのがあって、説明するとすぐに理解はしてもらえるんだよね。

 地域ごとに冒険譚だったりホラーだったり哲学? っぽかったりと色々なんだけど。

 ドミニクはケラケラと笑っている。まぁそんなもんだろう。


「そういやどうなの、ビアンカさんとは?」


 急に聞かれて意味が分からなかった。


「どうって?」


「イブキの髪飾り、毎日着けてて、聞かれると自慢してる。そーゆー感じなんじゃないの?」


 えー。嬉しいけど、それはちょっと恥ずかしい。そんで、なんだ、そーゆー感じって。

 恋愛的な意味ってのはゲスく笑ってるんで分かるけど。


「いや、保護者とか先生目線じゃね? 俺もそんな風にビアンカさんを見た事ないし」


「つまんねぇの!」


「俺に面白みを求めんのやめてくれる? そっちはどうなんだよ? 部隊の中であんの? 色恋沙汰」


 あるある、と、ドミニクは身を乗り出して話をする。

 聞く限りつり橋効果? 人間と一緒でなんかケガしたり死にかけたりすると盛り上がるんだな、きっと。

 ドミニクは好きな子に果物をプレゼントしたり、巡回を理由にドライブへ誘うけどなかなかなびかないらしい。モテたい! と両腕を振り回してる。

 鳥だと思って見るべきなのか、人間だと思って見るべきなのか、はたまた別の獣の血も入っているのか。

 見た目だと全部は分からないんだけど。


「ドミニク、浮いてる」


 興奮してちょっと浮いてるからやっぱり鳥でいいのかな?

 ホバリングっぽいけど。


「ごめんー。最近浮いちゃうんだよねー」


 とん、と地に足を付けて頭を掻く様は人間で、俺はますます分からなくなって、考えなくなる。


「室内だから頭気を付けて? 拠点は天井広くていいよね。飛びはしないの?」


「くふふ。イブキもそういう冗談言うんだな。飛べる訳ないじゃん」


 浮くのとどう違うんだろ?

 それから解体を終えた先生から扇風機の設計図を貰って、卓上の小さいやつを製造・複製機で作った。

 お代は別日に果物で。甘いのと酸っぱいのをリクエストする。

 解体したご遺体は先生が欲しい部位を取って、残りは遺族へ。

 これから全身タイツ部隊のみんなでその肉でバーべキューだそうだ。

 誘ってくれかけて顔色が悪くなった俺に、ドミニクは困った顔をしてぐしゃぐしゃと頭をかき混ぜる。

 食べて弔う。

 そういう形があるのだと。

 血肉にして共に生きるって考え方に神妙な気分になったのが大半。

 共食いへの嫌悪が少し。


「ドミニクは不味そうだから食べたくない」


 死ぬようなムーブかまさないでね?


「老衰だと肉が固めだからねー」


 カツカツと口を鳴らしてドミニクは笑った。

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