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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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46 雑談


 時折街中で白煙が上がる様になった。

 反王族デモとか、隕石を使わない生活を選んだ人たちがなにかを燃やしたりだとか、理由は色々。

 やっぱり火傷する人が多いみたいで、薬系錬金術師とか、薬剤師の人とかは大忙しらしい。


「薬剤師っていたんですね」


 薬系錬金術師の人がいるから居ないのかと思ってた。

 違いは植物だけで作るのが薬剤師で、その他素材を使用するのが錬金術師。

 話を聞くに漢方薬の調合師だとか、なんだっけ? 匂いの専門の調香師? とか、要するに植物の専門家なのかな。

 最初に辞書に薬剤師って確定させちゃったんでなんか会話が噛み合わない時もある。他に言葉も思い浮かばないのでとりあえずそのままにしてる。


「早急に完治させたい場合はこっちにも回ってくるよ」


 あー、削って付け直すんですね。

 つくづく俺には向いてない。

 先生も、お前には厳しいだろうって感じに鼻を鳴らしている。

 苦笑いで答えつつ、最後の羽根を乾燥用の土台に立てた。

 羽根用の硬化液を数種類作ってどれが一番綺麗に仕上がるか実験している最中。


「そういえば燃やすって何をどうやって燃やしてるんです?」


 マッチとかなさそうだし、火石ってのがあるけど、あれは隕石由来なのだ。


「今は発火の魔法を使える住民が火種を売っているらしい。摩擦でも火は点くが時間がかかるだろう? 結局は便利な方に流される」


 火種は保管箱に入ってて、蓋がスライド式。炎が直入れなんだって。そこから紙とか木に着火させる、と。


「酸欠で火が消えないのかとか、箱が熱くならないのかとか、なにが燃えてるのかとか、すっげぇ気になるんですけど???」


 最近の商品過ぎて先生もまだ設計図を見ていないらしい。


「ビアンカ嬢ならもう見ているんじゃないか?」


「ああ、専門分野的にそうですよね。友だちいなそうだけど……」


「……それでも情報は早いはずだよ。届けがてら聞いてみたらいい」


 先生が俺の並べた羽根を眺めて、二つ羽根を指でさす。


「私ならこれかこれだね。とても綺麗だ」


 選ばれたのは全てをまとめてつるんと硬化した羽根と、細部まで細かく硬化しててふわふわに見えるけど触ると硬い羽根。

 悩ましすぎる。

 先生に二つ作ればいいと言われて、それもそうかと羽根の入った引き出しを開けて使えそうな羽根を探す。


「車の運転はどうだったんだい?」


 そう、俺は昨日マティルデんさんと、車の運転を練習しに街外れまで行ってきたのである。


「運転自体は問題なかったです。デカすぎて街中は怖かったですけど」


 ビアンカさんの家の車は使用中で、全身タイツ部隊から車を借りてきた、と、運転手付きで迎えに来てくれたんだけど。


「住める車だからね」


 うん。キャンピングカーだったんだ。

 多分大型免許がないと運転しちゃダメなサイズの。

 普通に居間と寝室完備で、下半分は空っぽだったけど車も積める大容量倉庫。

 絶対に横転しない作りだって話だったので、無茶な運転を楽しみはしたけどね。

 街外れは草原みたいな場所で、最高速度を試したり、木と木の間をすり抜けたり、急に曲がったり。

 マティルデさんはスピード狂なのかとんでもなく楽しそうだった。

 隊員さんは特に意外性もなく、ヒャッハーしてたな。

 飛び降りる場合はこの速度が限界だから気を付けろ、と叫びながら木に飛び移ったりと実に自由で。


「あれ、家にぶつかったりしたら家の方を壊しそうですよね」


 街中では運転したくないかな。


「何事も慎重にしなさい」


 さては俺がぶつけそうだと思ってるな?

 マティルデさんからも隊員さんからも上手だと褒めてもらえたし大丈夫なはず。

 多分。

 ……あ、この羽根。

 元々ビアンカさんに渡していた羽根とおおよそ同じ大きさの色違い。

 山吹色の羽根を取り出して先生に見せる。


「先生。これ、使っていいですか?」


 青色の羽根と山吹色の羽根ならちょうど空に浮かぶあの二つの丸みたいだ。


「ああ、勿論構わない。留め具部分の材質も変えたらどうだ?」


 二つの丸をイメージしたのも伝わったのだろう、似た色の色石も出してくれた。

 アイデアを出し合って、俺が最終決定したら設計図に書き足してくれる。

 その間に青の羽根には艶やかな硬化液、山吹の羽根はふわふわな硬化液を塗布。

 トレイを二つ用意して、青い羽根用に金属素材と山吹の色石、山吹の羽根用に金属素材と木製素材と青い色石を並べた。

 後は製造・複製機に入れるだけなので、最終確認。


「硬化液が完全に乾いてからにしなさい」


「はい。あ、じゃあついでに休憩しませんか?」


 作業用エプロンを外して手を洗ってからお茶の準備。

 お茶は紅茶かウーロン茶かほうじ茶か俺には違いが分からないんだけど、とにかく茶色いヤツ。

 休憩部屋に後から入って来た先生に、


「イブキ、零してる」


と指摘されてしまった。

 なんでか毎回注ぎ口から零れるんだよね、お茶。こればっかりは気を付けててもダメ。原因不明。


「……ティーバッグでも作ろうかな」


「お茶カバン?」


 おお。久々に通訳失敗してる。

 ちょっと楽しい。

 メモに控えつつ説明したらあるみたい。

 布の袋とか、穴あき金属箱とか、普通に茶こしっぽいやつかな?

 使い捨てはなさそう。


「たまには俺の世界の知識がなにかの役に立たないですかね……」


 どうせ役に立ちそうな物だと構造が分からないんだけど。


「それこそ火はどうしてたんだ?」


 ぶっちゃけ火なんてそんな使う用事ない生活だったんだよな。

 家はオール電化だったし。


「多分火花程度の火をガスに引火させてるんだと思うんですけど……」


 カセットコンロを思い浮かべて動作込みで説明する。


「覗き込んで髭を燃やす住民が多そうだ」


 確かに。

 あれこれ話すけど、隕石を使えば何とかなりそうって話になってしまうので、


「錬金術師は隕石という素材に縛られているかもしれない」


なんて先生が珍しく哀愁を漂わせてる。


「うーん。でも国との問題が片付けば隕石は自由に使えるんですよね?」


 使えなくなってから考えるんじゃ遅いから、別の道も考えておくってのは分かるけど。


「……国が管理をしている事が悪い事ばかりでもない」


 よく分からなくて聞き返そうとしたら、先生はお茶を飲み干して立ち上がってしまった。


「さて、そろそろ乾いた頃合いだ。製造・複製機に入れておいで。その間にこちらは片付けておこう」


 聞かない方が良さそうな空気に、


「はい。ありがとうございます」


とだけ答え、俺は作業エプロンを手に作業部屋へ戻った。

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