表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

37/111

37 隕石万能説


 ビアンカさんが可愛かったのは置いといて、命がけってのは気になった。

 理屈としては分かる。

 失敗して殺されちゃうとか。

 逆に王族が幽閉なり処刑されたとして、ビアンカさんはどうするのかって話もある。

 俺なんて人間ポイってだけで首に噛みつかれて手を持ってかれたのだ。

 人間の嫌われっぷりを考えれば一緒に処刑の線は捨てきれない。

 でもそれだと俺も殺されちゃうんだよな。

 王族でもなんでもなくて、人間てだけで。

 それは納得いかないし、化けて出る自信がある。


『人体改造してみるか? 目や耳の形状を変えたり、体毛を髪と同じ構成にするだけでも人間離れすると思うよ?』


 先生が生物系錬金術師らしい発言をしているけれど、その発想はなかったです。

 俺のいた世界でも整形とか入れ墨とかで宇宙人を目指している人もいたし、ありっちゃありなのか?


『遺伝子を組み替えないでください。将来私が貰う約束をしているので』


 にっこり微笑むビアンカさんに、真顔が笑顔な先生は、


『なんだ。死ぬ気なんてないんじゃないか』


と鼻で笑った。

 ビアンカさんは胸を張って言う。


『死ぬ覚悟は出来ていても死にたいわけではありません』


 それはなんか分かる。

 俺なんてこっちに来てからまだ死にたくはない以外の生きる理由ってあんまりない。

 あ、それで思い出した。


「結局先生に手を作って貰っちゃったんで消化不良かも。ちゃんと最後までやってみたいです」


 魔法は使えないから、医者に納品物をつくるところまでになっちゃうけど。

 先生はふむ、と頷いて、


『それなら培養からやるか。期間は設けず引き続き学びに来る形でいいかい?』


と今まで勉強してきたまとめ資料を叩いた。

 弟子にするとか言わないのだから気を使ってくれているのかな。

 それとも俺が絶望的に向いていないんだろうか。

 気持ちはイーダのせいで筒抜けで、先生はくだらないな、と説明をいれてくれる。


『最終的にはやりたいかやりたくないかだろう? 確かに向き不向きで言えば向いていない。気持ちが負けてしまうと思う。けれど錬金術師の向き不向きで言えば向いていると思うよ。確実に腕を上げているし、イブキは失敗が少ない。自信を持っていい。まぁ気が変わったらいつでも言いなさい。住み込みの弟子として歓迎しよう』


 ビアンカさんが抗議の声を上げたのがちょっと面白かった。

 人間は群れを成す社会的動物だから一人にしてはいけない。私が先に保護したのだ。人間の事は人間にしか分からない。などなど。

 考えてみたら追放されてから自分だけが人間って環境だったんだし、それまでの生活とのギャップとか、色々あったのかな。

 パンイチにさえならなければ俺も一緒に住むのは問題ないんだけど。

 それからもう少し体が回復してから開始しようと学習計画を練る。

 俺は普段ヘルメットにゴーグル生活なので耳を人外にしてもあんまり意味はない。

 尻尾でも生やすか、羽根でも生やすか、とか半分からかわれつつ、半分本気で検討した。

 まぁ雑談。めちゃくちゃ楽しかったけど。

 午前中をそんな風に過ごしてからビアンカさんの家に帰る。

 俺が翻訳機を持ってきてないんで、イーダも念の為にと付き添ってくれた。

 運転はビアンカさんで、マティルデさんと二人で操作説明やちょっとしたコツを聞いてすっかり運転できる気になる。

 特に免許制度はないみたいで、なんならひき殺された方が悪いまであるらしい。

 ビアンカさん基準な気がしたんだけど、獣人族の身体能力を考えるとそれもありなのか?

 車自体あまり見かけないし、法律も曖昧。

 それこそ王宮関係者の機嫌で捕まったり、その場で殺されたり、なにもなかったりするみたい。

 警察なんて組織もそもそもないけれど、街の治安が悪いと思った事はない。

 意外と王族が必要悪の役割を果たしているのかな。

 マティルデさんと運転の練習に行こうと約束を交わしながら、死にたくはない以外の生きる理由を意識する。

 近い約束は理由にしては薄いけど、意識してしまえばとても大切な物に思えた。

 いつか元の世界に帰るとか、そういう方法の想像がつかない願い事だと夢っぽくて、それこそ生きる理由にはならないんだよな。帰れる気がイチミリもしてないってのもあるけど。

 イーダは先生が心配だからとすぐに帰ったんで、俺は自室で辞書を更新しつつ、翻訳機を装着。

 スマホコッチ版をどうすべきか。首輪もどうにかしなくちゃな。

 一先ず手に持って、ほんのりダルいだけで元気なんで部屋を出たら、二人とも工房に移動していた。

 ちょうどいいと思って俺も移動して首輪の話。

 金属にすればって言われたんだけど、それだとあの獣人の子どもの歯がかけちゃってたよなぁと思う。

 一生歯性の獣人族は居ないみたいで、乳歯から永久歯にはえかわる二生歯性が一番多いんだって。

 あの子どもは恐らく全て永久歯に生え変わっているはずだと言われて冷や汗をかいた。

 危なかった。あの若さで総入れ歯とか可哀そうすぎる。

 じゃあ、俺が即死しなくて、歯が折れない程度の素材を探そうと、マティルデさんが素材を齧ってくれている。

 製造・複製機で作れる簡単作成なので、その間に以前書いた設計図を取り出しておいた。

 もう一度水の国に行ってウーヴェに作って貰いたい気持ちもあるけれど、国境越えが難しそうなんだよな。


「そういえばエルンストさんは?」


 電話とかの通信手段はないけど、全身タイツ部隊には鳥系の隊員さんがいるので、定期連絡はあるらしい。


「素材は入手できたそうよ。もう帰路についたみたい。王族側が国境に人手を避けない様にタイミングを合わせて国内で暴動を起こすそうだから、もうニ、三日かしら」


「えー、全身タイツ部隊を私物化してますね」


「武力制圧用の素材が必要なのだから、彼らだって困っているのよ」


「首輪の材料にも必要ですよ」


 マティルデさんが噛み試してしっくり来た素材を振りながら話に参加してきた。

 隕石から鉄の成分を抽出した素材を木材と混ぜた物みたい。

 在庫がないので素材造りからやらないとだ。


「材料は……足りそうね。作ってしまいましょうか」


 俺がやるにはちょっと無理のある作業なので、ビアンカさんがやってくれる。

 木材を並べ、オブラートをもっと薄くした感じの隕石素材をピンセットみたいな専用の器具で重ねていく。

 隕石は分解して何種類かの素材になるのだ。

 中には目視できないけど触れたり、目視できても触れないとかもある。

 かすかに炭酸水の泡が弾けるみたいな音を立てて、晴れた日にホコリが見える時みたいに、はらはらと何かが舞った。

 仕上げは別の隕石素材で作った薬液を塗布。

 今度は木材の端から端にかけて、サァッと雨みたいな音を立て、ついでに雨のふり初めにする匂いがした。

 マクシミリアン先生みたいに魔法が使えるわけではないけれど、隕石素材のおかげか錬金している姿は魔法使いみたいだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ