26 乱高下 注※すみません品がございません
俺、高橋伊吹は平凡な十六歳の健康的な男子高校生である。
「は?」
種? 種子島? 鉄砲? ……わぁ!
円周率でも唱えて平静を! ……わぁ!
ヤバイヤバイヤバイヤバイ自主規制自主規制自主規制自主規制パンイチビアンカさん自主規制自主規制自主規制自主規制……パ……パ……
「っっっ服を着てくださいっ!!!!!」
などと口走ってしまうのは仕方がない。
仕方がないったら仕方がない。
『イブキが嫌がるから服は着てるわよね?』
ビアンカさんまたしても困惑。
そうでしょうとも。俺が全面的に悪いんです。
今日もほとんど水着みたいな格好に作業用軍手ってどこのマニア向けグラビアなの!?
『『え?』』
イーダとビアンカさんがそろって声を上げたのは、俺が思わず想像した脳内映像を見たからに違いない。
ああ、もう、イーダが繋げてる時に脳内で話しかけちゃダメってわかってるのに!
「あーあーあー! ちょ、離れて離れて!!」
時すでに遅しである。
たぶんトマトみたいに真っ赤になってる。
顔面が熱い。
「離れた、離れた」
ビアンカさんがわざわざ日本語で言ってくれて、
『大変だ! イブキは羞恥でも死にかけるんだった!』
イーダが追い打ちをかけて来た。
「大丈夫?」
ガっとビアンカさんに顔を掴まれて覗き込まれる。
ビアンカさんは物凄く心配してペタペタと顔を触ってくるんだけど、あの、それ、逆効果です!
ああ、もう、いっそ気絶! 気絶したい!
勘弁して!
『落ち着いてくれ。何をそんなに慌てている? どうしたらいい?』
イーダに言われて取りあえず深呼吸して、それから慌てている理由を……お父さんお母さん深夜の大運動会……わぁ!
「ちょ、取りあえずビアンカさんは無理! せめてエルンストさん!」
男の人でお願いします。
思いはイーダに伝わり、ビアンカさんがエルンストさんを呼びに行った。
『……雲族に性別はないが、一応イーダは女性名なのだが……』
ボソッとイーダ。
え? 知らなかった!
びっくりしたけど、確かに雲に性別もなんもないよな。今だ首に巻き付いたままのイーダをポフポフと叩く。
「えっと、どうしてその名前になったの?」
まだ顔は熱いけどちょっと落ち着いてきた。
『名前がないと不便だと友人が付けてくれた。私の話し方で女だと思っていたらしい』
「え? 名前がなかったの?」
『雲族は勝手に生まれる。親兄弟もない。それが普通だから寂しくもない』
聞いてないのにそこまで言うのだから何度も聞かれたのかな。
種族特性ってやつだ。
「そっかー。でも話し方? そんなに女っぽいと思った事ないけど?」
『繋げているからイブキのイメージで聞いているだろう? 私の喋り方は丁寧な部類だ』
そう言われてみればイーダとは中央語で会話をしてなかったかも。
他の人と話している時も繋げっぱなしだから、聞くんじゃなくて分かるって感じで。最初に言われた通りテレパシーなんだろうな。
中央語って男言葉とか女言葉がない。通訳機は全部丁寧語になりそうだし、こういう風に会話が成り立つ感じが少なくなりそうでちょっと寂しい。
って、それは置いておいて。
「そんな性別がなくて、親兄弟のいないイーダに質問なんだけど、さっき俺の脳内に浮かんだビアンカさんを見てどう思った?」
雑誌の巻頭グラビアっぽいセクシーポーズなビアンカさんが思い浮かんじゃっていたのだ。
布面積が少なくて下着なのか水着なのかわからん感じのあれ。
『四つん這いのビアンカさんか? 目た覚えのない体勢だった』
あー、うん。そうだよね。セクシャルな印象がなくて何よりです。
俺がもう完璧にスンとしたところでエルンストさんが走ってきた。
イーダがすぐに繋げてくれたので、
『なんだ、もう平気そうじゃないか……』
と脱力した言葉も確認できた。
違うんだよ、エルンストさんはもっと丁寧な喋り口調なんだよ。
俺がパニクッてるって言われて慌てて来たらしい。
なんかごめんね。
ビアンカさんはちょっと間を開けてお茶を持って来てくれるらしい。
気を使わせちゃったかな?
でもそれなら男同士でとっとと話をしちゃわないと。
とか思うだけで俺はしどろもどろだけど。
「ビ、ビアンカさんに、その、大人になったら種? が欲しいって言われて。それってつまりそういう事ですよね?」
『? どういう事でしょう? 子種が欲しいと要求されたのですよね?』
エルンストさんが困惑している。
くっそ、大人の余裕なのか? そんなんヤったらいいじゃんみたいな顔して。童貞なめんな?
『あー、なるほど』
と、これはイーダ。
え? なに?
『中央では繁殖で合体しないよ?』
えええええええ? しないの?
『……またパニックを起こしてませんか?』
エルンストさんが冷静なので余計に恥ずかしくなってきた。
いや、驚いただけでヤりたかったとかではないんです。本当です。
あ、そっか、つまり精子を提供しろって話だったのか!
あー。王宮が結婚させたがったり、錬金術師が獣人作ったり、なんか一気に繋がった気がするなぁ。
ほんのり嫌な気持ちにはなったけど、俺の事としてはホッとした。
なんだ、そっか、焦った。
ビアンカさん美人だしスタイルもいいし、それはそれでなんか惜しい気さえするけど。
って、俺は何を考えているんだ。
パニックではなくて興奮の方かもしれません。ごめんなさい。
イーダの体に熱くなった顔面を押し当てて視線をそらす。ひんやりしているから都合がいい。
そんな状態の俺にエルンストさんは静かに説明をしてくれた。
『中央での繁殖は人工授精のみです。王族が人口管理をしていますから、自然繁殖が確認された場合は対象者を確保、堕胎後に男女とも去勢手術を行います』
言われた内容に驚いて、エルンストさんを見上げた。
『人間の繁殖には女の獣人を代理母体として雇用しますし、ビアンカさんも作業感覚でしょう。そこに羞恥や好奇心、快楽などの感情は含みませんから、イブキも落ち着いて対応してください』
みんながパンイチで生活しているところをまじまじと見た事はない。
恥ずかしくて視線をそらし、服を着てくださいと伝えてきた。
エルンストさんなんて考えるまでもなく男なんだけど。
『ビアンカさん付に決定した段階で私も去勢手術を受けています。異性に興奮する感覚も分かりませんから相談に乗れず申し訳ありません』
王族、闇が深くね?




