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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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23 それなりに理由はある


『こんなだったのよ』


 ビアンカさんは人差し指と親指の先をくっつけて笑った。

 戻ってきた時のイーダのサイズらしい。

 イーダは加湿器みたいなやつで治療を受け……治療? 食事の時も使ってなかった?


『治療にも食事にもなるんだよ』


 うわ、俺、また心の中で話しかけてた? 話の腰を折ってごめんな?

 ええっと、イーダから俺の居る場所とか現状を聞き出して作戦を練ったんだって。

 あの全身タイツ部隊は反王族組織っていうのかな? 獣人に人権を! みたいな団体なんだけど、元王族で人間のビアンカさんには好意的。

 俺の奪還と、ちょっと王宮を壊すのを交換条件にしたそうな。

 それって交換条件になるの?


『だって王宮が壊れたら人手が割かれたりして忙しくなるから隙ができるでしょう?』


 なんか俺の頭には狭い部屋に寿司詰めにされて働く人々の図しか浮かばない。まぁいいか。

 ビアンカさんは毎日王宮に乗り込んだ。俺に会わせろとか、状況説明をしろとか、着替えを持っていって当日身に着けていた物を回収したりしたんだって。

 それはあくまでポーズで。


『イブキの治療もしてもらいたかったし、人員配置とか、王宮を壊す道具の制作とか、時間稼ぎにね』


 ビアンカさんが全身タイツ部隊と繋がりがある事は王宮側にも知れているそうで、ワザと脅しにつかったりもしたみたい。

 ビアンカさんによく似た顔立ちのおっさんはやっぱりビアンカさんの親族らしくて、情に訴えたりもしたとか。愚痴っぽく語るからビアンカさん的に不本意だったっぽいけど。

 そのせいであの空色の処刑シーンが爆誕したと思うと頭が痛い。

 情に訴えてあの対応なの? 頭は大丈夫な人?


『考え方は人それぞれよね。私は大嫌い』


 俺の意識が朦朧としていた期間を聞いて驚いた、なんと十二日間。

 ニ、三日だと思ってた。

 火傷の状況よりも薬漬けって感じだったみたい。

 ビアンカさんの所に俺を返すつもりもなかったんだって。


『王族は全員人間だけれど、純粋な人間の人数も減って近親婚も問題視されていてね……』


 言葉は濁していたけれど意味は分かった。

 俺、結婚させられちゃうところだったんだな!

 好きな子もいなかったし、好みのタイプなら別にいいけど、選べる余地とかなさそうだし。


『……そうね。遺伝子で相手を選ばれていたと思うわ』


 ビアンカさんが笑いながら言った。

 実験動物みたいな話だなぁ、と思う。

 それでようやく当日の話。


『スピード勝負だったわ』


 王宮に、毎日同じ時間に乗り込んでいたビアンカさんは、すでになにも言わずに通される状態だった。

 いつもはエルンストさんだけが付き添いだけれど、この日は初めてマティルデさんも一緒。

 俺の居場所はイーダから聞いて分かっていたので、警備員の死角が一番多い場所でマティルデさんが離脱。

 たどり着けなければ迷いましたで通す予定だったみたい。

 ちょっと雑に聞こえるけど俺には聞いた覚えがある。

 それ、あんまり細部まで作戦を練ると失敗するからって話でしょ?

 ビアンカさんたちも聞かれるまでは不在に気が付かなかったふり。

 のために、不足している錬金術の材料話を白熱させていたらしい。

 応接室で親戚のおっさんが待っていたんだけれど、ちょうど口喧嘩に発展していた頃合。

 おっさんの側近の人も、おっさんも、取りあえず落ち着こうかって感じで、マティルデさんの不在には言及してこなかった。

 その頃全身タイツ部隊は門を制圧完了してたんだって。

 マティルデさんの水魔法の音を合図に、驚いているおっさんをエルンストさんが楽々確保。

 隠し持っていた土管で……


「え? 隠せるサイズじゃなくない!?」


『イブキの首輪みたいに組み立て式にしてみたの! 四枚にしてズボンに入れて……』


 ビアンカさんが嬉しそうに説明をしたけど、長引きそうだったんで途中でイーダが止めた。

 俺も気になったので後で見せてもらう約束をして続き。


『護衛一人を残して廊下に待機していた警備員も扉前から離れてくれたから楽だったわ』


 おっさんを人質に出口に向かう間に全身タイツ部隊と合流。

 おっさんを気絶させてそこら辺に投げ飛ばして土管を発砲。


「あれって、なにか鉄球が入ってたよね?」


 鉄球も隠し持ってたの?


『そうなのよ! 管の中で土魔法で鉄球を作ったの。風魔法の後に火魔法が出る様に遅延回路で……』


 俺が聞くから悪いんだけどなにかと脱線する。

 それも後で教えてもらおう。多分しばらく退屈なベッド生活だし。


『足の速い人が来てくれたから背中に乗せてもらって』


 ビアンカさんは運ばれ、エルンストさんは足止めに絶妙に嫌な所、柱とか階段とかをぶっ壊しながら脱出した、と。

 逃亡先のこちらはビアンカさんの友人の家。全身タイツ部隊の人だそう。


『おーい、飯の時間!』


 呼びに来たのが多分ネコ科の獣人でダイアンさん。

 人間よりも動物側の遺伝子が強いんだと思う。

 全身体毛に覆われたがっしり体系。

 初日に顔合わせをしてから会ってなかったんだけど、今日は家に居たらしい。


『ちょうどここに逃げ込んだ日の話をしていたのよ』


 ビアンカさんが俺用に持ってきてくれたサンドイッチを受け取りつつ言ったので、


「なんであんな格好なの?」


とずーっと聞きたかった純粋な疑問を投げかけてみた。


『みんな獣人だから個人が特定されないためにも全身タイツが安全。王宮は白壁が多いから今回は白にしてみたんだ。正解だったな』


 だって。

 抜け毛対策と擬態だった。他にも足跡に指紋? でいいのかな? 肉球? の形状でも個人が特定されやすい。なにか硬い素材の人間の手とか足の形をした、靴下? 手袋? を全身タイツの内側に仕込んでるんだって。

 俺が理解できてない顔をしてたみたいで、わざわざ取りに行って実物を見せてくれた。

 スパイ映画みたいでちょっと面白い。

 お仲間さんたちは全員無事に逃げきれたと聞いてほっとする。

 ただ、ビアンカさんの家には二十四時間体制で監視してる人がいるんだって。

 え? もう戻れないとか?


『気にしなくていいわ。必要な物は全部移動してあるし、踏み込んだら爆発する様にしてあるから』


 ビアンカさんに笑いながら言われた。

 気にするよ!

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