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02 意思の疎通から始めよう


 ワンチャンただの小さいおじさんて可能性ないかな?

 とは思うも、なにか話しかけてくれるのに全然わからない。

 異世界転移ならチートで言語さん優秀とかないの?

 とにかく喉が渇いていたので、身振り手振りで喉が渇いていると主張してみる。


「!*%♭※☆■□○×=>”?」


 穏やか目に何か言って、水球を投げつけて来た。

 は? どっから出したの?

 反射的に受け止めたら、怪訝な顔をしてこんな事を言う。


「□!:×&$☆*○%◆」


 ひょっとして攻撃された? でも痛くなかったし口調は穏やか。

 怒っている風ではなさそうなので、もう一度、と指を一本立てる。

 顔を洗う時みたいに両手をそろえて上に向け、差し出してから、はいどーぞと上下に揺すってみる。

 通じたのか、手の上に水球を落としてくれたので、慌てて飲んだ。

 どっから出したとか気にしても仕方がない。

 もうびしゃびしゃだし、寒いし、腹は減ったし、言葉は通じないし、水は美味いしで、涙が出る。

 小人はその場でぴょんぴょんと跳躍し、


「$☆*▲○%:%♭※☆」


となにか告げてクルっと背中を向けた。

 そして、右前方に右足を出し、右足の後ろに左足を移動。再び右前方に右足を出して、右足の後ろに左足を移動。今度は左前方に左足を出して、左足の後ろに右足を移動。左をもう一回。

 これを繰り返して進んでいく。

 結構速度があって、呆気にとられてる内にどんどん先へ行ってしまうので、慌てて追いかけた。

 小人が何度か振り返っては俺の走る姿を見て笑うんだけど、そっちの方が面白いと思うよ?

 ムッとしている場合ではないけど、やっぱり笑われると面白くない。

 真似してトット、トットと歩いてみたら、両手を上げて手のひらをクルクルと回している。

 手話の拍手みたいな動作だけど、同じ意味なのかな?

 褒めているとしたら、この小人にとっては俺の歩き方が変なのだろう。

 でも地味に脛が痛くなったんですぐに普通の小走りに戻した。

 なんでそんなに速いんだ。

 小人が向かった先もまだ森の中。

 で、木々を柱に建てました、みたいな、広い家? の前で立ち止まった。

 

「×=>”$☆*□!:○%:」


 布がかかった入り口っぽいところで声をかけている。


「▲○☆■□◆☆*」


 中から返答があって、出てきたのは白い雲だった。

 ちょっと透け感のあるふわふわと浮遊する物体。

 生物なの?

 雲と小人は困惑する俺を置いてしばらく話をしていた。


「%♭※☆!:×&$☆」


 こちらを向いた小人が、ピアノを弾くみたいに両手を下に向け、上下させてなにか言っている。

 相変わらず意味は分からない。

 すると白い雲がたなびいて俺の周りをクルクルと回り始めた。

 別に苦しくもなんともないけど、少しだけひんやりする。

 落ち着かないから視線を動かしてあちこちを見たけど、特に何も言われなかった。

 ようやく雲が離れていき、そのまま雲は縦に伸びて、俺になる。

 色は変わらず白くてちょっと透けているけど、俺。

 雲に白塗りされて、それを鏡で確認しているのかと思うくらいには俺。

 白い俺は頭のてっぺんからツーっと触角を伸ばして、俺の頭に突き刺した。

 痛くはないが、やっぱりうっすらひんやりする。


『テレパシーに言語は影響しないと思われる。どうだ?』


 ようやく何を言っているのかがわかって、俺はうなずくしかできなかった。

 こんな状況にも関わらず、ほっとしたのだ。


『安心したら泣くのか。不思議な種族だな』


 雲はそう言って俺の手を取って家へ招いてくれた。

 家は八本の木を柱に、横板で壁を作ったいびつな八角形。

 いびつなんで分かりにくいけれど、教室位の広さはありそうだ。

 部屋の真ん中にぼんやりと発光する卵型の何かが置かれている。

 結構デカくて、俺が両手で抱えても手が届かなそう。

 俺の身長が百七十だから、二百センチはあるのかな。

 高さは顎下辺りになりそうだから百五十そこそこ。

 で、それを半分囲うみたいに机がある。

 雲が家主だからか、椅子も、ベッドも、クローゼットもないけど、暖かかった。


『空腹の様子だが、私は空気中の水を食うし、ウーヴェは果物の汁しか食わん。なにで腹を満たすのだ?』


 ウーヴェ? 小人の名前だろうか?


『そうだ。ウーヴェは林業家。私はイーダ。地形学者』


 俺の思考が筒抜けらしく、先に名前を名乗ってくれたので、こちらも名前だけ名のる。


「俺はイブキ。高校生」


 ここに高校があるのか知らんけど。

 イーダはウーヴェにもツーっと触角を伸ばして、


『名はイブキ。まだ子どもの様だ』


と説明している。


『縦には長いが幅もなく毛もないからな!』


 ウーヴェが言った。

 あ、これで三人で話ができるのかな?

 そして子どもと説明するのだから高校もなさげ。


『それで何を食うのだ? 空腹なのだろう?』


 なにを食うと言われてもな。

 コンビニを思い浮かべて、菓子パンや弁当、肉まんなんかを想像したところで、


『見た事のない食べ物だ』


と、イーダがのけぞり、


『私は木に携わる仕事をしているのに木など食べた事がない』


と、ウーヴェは前歯を叩きだした。

 意味が分からない。

 見た事がないのはまだしも、木? 木なんて食べないよ、俺。


『まだ若い小さな木だろう?』


 もしや菓子パンか? 最近よく食べてた切り株みたいなパンを思い浮かべちゃってたからな。

 食い物の話をしていたら余計に腹が減った気がする。

 果物の汁があるなら果物はあるんじゃないか?

 リンゴ、バナナ、ブドウ、イチゴ、あれ? イチゴは野菜だっけ? 森なら木の実系? 柿、梨、ミカン、ザクロ。ザクロ食った事ないけど。森っぽいなら胡桃とか栗も食えるけど剥ける気はしない。

 俺の中の森のイメージでポンポンと思い浮かべたら、いくつか分かる物があったみたい。


『私たちが食べる物でもよさそうだ。それなら村に移動しよう』


 どうやら村があるらしい。ウーヴェみたいな人が住んでいるのかな?

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