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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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18 日常


 月日の経つのは早い。堕ちてから一ヶ月が経った。

 朝は目覚まし時計で起きる。

 この世界の目覚まし時計は枕型で、時間になるとどんどん枕が膨らんで体が持ちあがる仕組み。

 おかげで蹴っても起きない俺は何度かベッドから落ちる羽目になってる。

 結構な音がするんで最初こそ心配されたけど、もう誰も気にしなくなった。

 顔洗ったりも自室で済ませてる。

 水転送機とか言うシャンプーボトルみたいなヤツを買ったんで、桶とトイレを組み合わせて使っている。

 ボトルを押して水が出て、汚れた水は桶にためる。

 ロープウエー乗り場で買ったトイレを桶の側面にあてスイッチを押せば、ゆっくりと中の水はなくなる。

 相変わらずどうしてそうなるのか分からないけど、それを考えたら元の世界の上下水道の仕組みも知らないしね。

 朝食を食べたら片付けの手伝い。

 やっぱりとんでもねぇ食洗機があるんで運ぶだけだけど。

 ちなみに掃除はロボット掃除機の気持ち悪いヤツが蠢いている。

 ナメクジとアメンボを足して二で割ったみたいな形と動作。

 埃とかのゴミが燃料らしくて、壊れない限りは家のどこかで稼働してて、見かける度にびっくりする。

 それからマティルデさんの買い物に付き合うか工房のお手伝い。

 必要最小限の言葉、たとえば、これください、とか、これでいいですか、とか。

 でも聞き取りは難しいし、想定外の言葉にはフリーズしてる。

 マティルデさんはすぐに助けてくれるけど、エルンストさんは助けを求めないと助けてくれない。

 昼を食べたらビアンカさんとイーダと辞書造り。

 それ以外の時間で発生した分からなかった言葉をメモしておいて先に片付ける。

 その後は雑談形式で。

 通訳が必要です、とか、ビアンカさん家の住所とか、知ってないとヤバいのから始めた。

 それから、挨拶、はい、いいえ、ありがとう、みたいな基本のヤツ。

 で、家で使う会話、工房で使う会話、買い物で使う会話が一通り終わったところ。

 数字は共通だったんで書けば通じるからまだましかな。

 百とか千とかごっちゃになるんで、口頭だと数字を羅列してる。

 二千二十四だとにーぜろにーよんみたいな感じ。

 イーダが不在の日は絵で説明したりもする。

 壊滅的に絵が下手なんで、ビアンカさんは笑いっぱなしになる。

 絵で伝えようと思いついた時はそれなりに頑張って書いたけど無理なんで諦めた。

 今は記号っぽく線と丸で済ませてる。


「今日はここまでにしましょう。お疲れさまでした」


 ビアンカさんが定型文で締めくくる。


「アリガトウゴザイマシタ」


 俺もこっちの言葉でお礼を言う。

 それからは作りたい物があれば作ったり、工房の材料庫の片付けとか、まぁなんとなく色々。

 あの冷蔵庫は単純に製造・複製機と訳した。

 最初に造らせてもらったのは服とハンガー、あまった木材で箸。

 設計図の書き方を教わりながら。絵が下手でも定規を使って時間をかければなんとかなる。

 箸は、使えないけど便利そう、と言われたんでトングも作った。

 これは工房にも置いてて微妙に売れてる。

 ありそうでなかったんだな。

 特許システムもあるらしいけど、俺には取れないみたい。

 ビアンカさんに丸投げして滞在費替わりに。

 物価とか分からないんで、金額オーバーしそうなら言って欲しいとは伝えてある。

 それからスマホとかイヤホン関係。

 この世界に置き換えるとどうなる、って線でゆっくり進行中。

 電気の件含めてイーダと資料をまとめる日もある。

 イーダはこっちで仕事があるみたいで、ちょいちょい出かけていく。

 俺が不安に思うのが分かるみたいで、あくまでちょいちょい。

 多分、二ヵ所寄る様な用事でも一ヵ所目の用事が終わったら一度戻って来て顔を出してくれてる。

 申し訳ないとは思うけど、俺もいちいち安心した顔をしちゃうからか気にするなと言われた。

 夕食前に風呂と洗濯。

 洗濯機も異常だった。畳まれて出てくるし、全部で三十分足らず。

 それで着替えちゃうんだけど、パジャマにしてる服で飯を食うので頭がおかしいとは思われてそう。


『冗談ではなかったのですね……』


 とはマティルデさんのお言葉。

 食べカスとか付いたらさすがに取ってから寝るし大丈夫だと思うんだけど。俺が特殊なのかな。

 俺ばっかり好き勝手するのもダメかなって。パンイチは無理だけど下着姿なら何とか耐えますって譲歩。

 結果、夕食時は海の家みたいな光景に。

 慣れてきたんで気にならなくはなった。

 角度的に、あああああ! ってなる日はあるんだけどね。

 そんな日はウーヴェが作ってくれた棒で剣道の真似事。

 駐車場で素振りをして発散をしている。

 持ち手はどっちの手が上なのかとか、足運びがどうとか全然知らないので適当に。

 エルンストさんが面白がって付き合ってくれるのでいい運動だ。

 もう一回風呂に入って着替える羽目にはなるけど。

 そうそう、ロッテは最初の一週間は顔を出してくれてた。

 夕飯の後が多いかな。

 人間の人数が少ないから定期的に血を抜いて輸血ストックを作れだとか。そんな感じのやっておくべき事とかをあれこれ教わった。

 常識が分からないからなのか俺にはちょっと怖い話が多い。

 なんで同席してくれてるイーダとビアンカさんに意見を求めたら、


『説明だけ聞いておいて、生活に慣れてから考えたら?』


とビアンカさんが言い、


『理解出来てからでいいんではないか? 私にも分からない話だ』


とイーダは言った。

 強制ではなさそうなので、こっちの言葉でありがとうを伝えて、資料とか申込用紙があれば下さいと言ってある。

 タイミングが悪くてその後はケガも治ったんで顔も合わせてないんだな、これが。

 その内必要になったら塔に会いに行けばいいのかな。

 就寝前に廊下で空を見上げるのは日課になった。

 長い間ぼんやりしているとイーダに心配されるんで、ちょっとだけ。

 休日は五日に一度。

 連休とかないのかなって思ったんだけど、どうやらビアンカさん家がそうしているだけみたい。

 他の一般人も休みたければ休んじゃうのが普通っぽいんだよね。

 俺が学生だったからかそういう感覚は理解できない。

 学校でそれやったら呼び出されて説教だよね。

 休みとか一日寝てるだけなんで別に問題ないし、慣れたらむしろこの方が良い気さえしてる。

 今のところ問題ないかな。

 もう少し話せるようになれば一人で出かけられる様にもなると思うし。

 ただ、この際学力テスト的なのでもいいから、なにかイベント起きないかなと思う程度には余裕があった。

 暇なのか飽きたのかは分からない。

 そんな風に思わなければ、と思っちゃう程度。

 事態が動き始めたのは翌週の事。

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