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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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15 使ってても知らない物


 ただの高校生にスマホの素材や構造など分かるはずもなく、当然作る知識もない。

 でもそれが通じない。

 しばらくイーダが頑張って通訳をしてたんだけど、もうダメだとビアンカさんと俺をつないだ。

 予定していた二時間を超えた辺り。


『まだ大丈夫かしら? 集中力は持つ?』


 と心配げなビアンカさんに問題ないと伝えてから複製について聞いてみる。


『◎◇&#■で複製するだけでしょう?』


 だって。

 なんだって?

 俺の困惑にビアンカさんも困惑したところでマティルデさんがやって来た。

 今日の作業を終えたのなら服を作りましょうとお誘い兼お迎え。

 ビアンカさんは、


『それならちょうどいいわ! イブキに複製が通じなくて困っていたの。一緒に作りましょう』


と嬉しそうに言った。

 それからマティルデさんが購入した生地や型紙を取りに行って戻って来て、俺はパンイチに。

 最後の一枚も脱がされそうになったけど断固拒否。

 全裸に対する羞恥レベルが違いすぎる。

 下着が昨日貰ったヤツで、トランクスっぽい形なんでまだなんとか。

 ブーメランパンツとかじゃなくて本当に良かった。

 紙テープ? を体のあちこちに巻かれて、それを簡単な人型が書かれた紙にペタペタと貼っていく。

 貼り終わったら折って石の箱に入れる。

 それで俺のサイズ表は完成らしい。

 で、箱の上に型紙と生地、上に小石を置く。

 それを部屋の隅にあったツードアの、外国製の冷蔵庫みたいなヤツの上段に放り込んだ。


『三分待てば完成よ』


 とビアンカさん。

 電子レンジ? カップラーメン? 冷蔵庫なのに?

 混乱する俺をよそにビアンカさんとマティルデさんは女子トークを繰り広げている。

 ビアンカさんとしか繋がってないんで、マティルデさんが何を言っているのかは分からないんだけど、楽しそう。

  購入した生地が地味な色ばかりとか、可愛い柄の生地はあったかとかそういう話。

 それで三分経って、冷蔵庫からドアをノックする様な音が鳴り、マティルデさんが今度は下段の扉を開いた。

 取り出されたのは午前中に選んだパンツの俺サイズのやつ。

 履いたらぴったりだった。

 糸は生地から生成。

 今回はなかったけど、ゴムみたいな伸縮性のある紐も糸から編み方を変えて作れるんだって。

 でも全部糸からだと時間がかかるし、柄物だと何色も糸が必要になる。だから購入するのは生地なんだとか。

 へぇ。

 それ自体はあんまり興味がないからそうなんだ、としか思わない。

 入れた石はボタンになって、ボタンフライのチノパンが出来上がり。

 単純に、すっげぇぇぇぇ! とは思うよ?

 でもそれ以上の感想が出てこない。


『脱いでちょうだい』


 それでまた脱がされて、今度は下の段にパンツを入れて、上段を開ける。

 二着分購入していたので、生地は残っていた。

 型紙と、俺のサイズ表を抜き取って再び扉を閉める。


『で、これが複製。やっぱり三分ね』


 ビアンカさんが型紙とサイズ表をポンポン叩きながら言う。


『設計図とサイズ表と材料を上に入れると生成。下に出来上がりと上に材料を入れると複製なの』


 質問を重ねて無理やり理解する。

 上段は設計図を読み込む機能と材料を入れる場所。

 下段は立体透視スキャン機能と3Dプリンターを搭載。

 かな? は? ま?


『通じたかしら? イブキの世界では◎◇&#■をなんて表現するの?』


 多分◎◇&#■は冷蔵庫の名称だろう。

 なんて表現をするのか? だと?

 スキャンしてコピーなら複合機? ちょっとニュアンスが違うよな。

 まんま立体印刷機でいいのか?


「……そもそもどういう意味の言葉なの?」


 逆に聞いてみる。


『三種類のスキャニング方法の名前を合わせて省略して、物を新たに生じるという意味の言葉に、装置という言葉が付いているわ』


 商品名に近いのかな? それならいくら話をしても通じないんじゃないか?

 スキャンに種類があるのとか知らないし。俺の語彙力がないのも問題なんだけど。

 でも。

 ひょっとして。


「……物が新たに生じるから錬金術師の家にあるの?」


 ビアンカさんが少し考える様に下唇をこねている。

 疑問のまま思わず聞いてしまったのはダメだったかな?

 結構確信ついちゃった感じ?


『……確かに錬金術師の発明品だし、元々は錬金術師しか扱ってなかったわね……今は各家庭に一台はあるけれど……』


 え? こんなのが一家に一台?


『住居の家事部屋にあるそうだ。水の国にはない』


 とイーダがマティルデさんの通訳と自身の意見。

 俺が台所だと思っていた部屋は家事部屋って名前らしい。


「まさか料理って……」


『上段にレシピと材料と皿を入れる』


 すげぇ。

 ひたすらそれしか出てこない。

 異世界よりタイムトラベル感あるけど。

 どういう仕組みか聞いても俺には理解できない言葉のオンパレード。

 いつかわかる日が来るのだろうか。

 話が進まないのでそういう物と雑に理解してスマホの話に戻る。

 下手にバラして元に戻せる自信もないので、思いつく限りの素材を上げた。

 ウーヴェとイーダに食べ物を教えた時みたいに、できるだけ思い浮かべつつ。


 強化プラスチック? 外装からして謎だし通じなかった。

 樹脂だっけ? 別になんでもいい気もする。

 木だと燃えそうで怖いかな。

 画面だってガラスなのかアクリルなのか。

 こっちなら炭化ケイ素ダイヤ?

 超高額になりそう。

 パッキンあるよな? ならゴム? でもさっき樹脂は上げてるからそれで済んでる?

 鉄、銅、エナメル線? この辺もゴムと一緒で、金属でひとくくり?

 電池が一番謎なんだけど。

 炭素棒式じゃないなら一円玉と十円玉と塩水? 紙はさんだっけ?

 液漏れするとか言うし、なんか水分は含んでるはず。

 ビアンカさんとイーダが話し合ったり、俺に質問したりして材料を揃えてる。

 何で出来てるか知らなくて使ってる物って多いんだよな。

 それこそそう言う物だと思って使ってたし。

 じゃあわからなくてもいいのかな。


 冷蔵庫っぽいやつに隕石の塊を入れていたビアンカさんが、びっくりした顔でこっちを見た。

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