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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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109:番外編)知っている


 七年の隔たりはとても大きい。


「二十歳の時に夢に見たきりだったし、会えるか心配だったのだけれど」


 二度目ましての妹はもういい歳のお母さんだった。

 妹が結婚し、甥っ子と姪っ子ができて、母が亡くなり、後を追う様に父も亡くなり、一番上の子は来年十八歳になると言う。

 毎年ダイジェストで聞く七年間の向こうの話。

 今年で終わりだろうとぼんやり思う。


「会えて良かったわ。父さんと母さんからときどき兄さんの話は聞いていたから、伝えなくちゃと思っていたの」


 あの頃の母さんに似た面差しで、少しだけ悲しそうに、もう身内はいないのよね、と言葉を切る。

 祖父母に両親、親戚は少なくて交流もなかったから、直系、みたいな考え方なら天涯孤独かもしれないけど。

 旦那さんや子どももいるし、まぁ幸せな方じゃないの?

 相談があったらいつでも、と言いたかったけれど、俺にはもう元の世界の常識もわからないし通用しないだろう。


「知らせてくれてありがとうございます。俺も会えて良かったです。どうぞお元気で」


 どうにも親身になれなくて、俺がよっぽど冷たいのかとも思ったけれど、単純に驚いてたんだよな。

 二日ほど眠って目が覚めた時にそう気が付いて酷く落ち込んだ。

 人生経験は向こうの方が長いけれど、一応自分は血縁者で、もう少し言い方があったなぁとか、ね。

 でもさ。

 向こうは両親を見送って何年か経っているかもしれないけれど、俺には初耳だったし。

 それこそ本当に、一年に一度両親と会えるのは夢みたいな話で、変わらずにいつまでも続く気がしていたのだ。

 冷静に考えてみればそんなはずはないのにね。


『イブキ』


「んー?」


『大丈夫?』


「んー。少し早いけど、中央方面にでも行かない? マルレーネちゃんとか、先生の顔も見たいし、ぐるっと、のんびり」


『ああ、いいね。私は問題ないよ。イブキの仕事は?』


「定期巡回があるけど、移動しながら前倒しですませるよ。開発も入っていないし」


 毎年恒例になっている年末年始のキベン国滞在に合わせ、水の国に点在する村々の道具のメンテナンスなんかをしているのだ。

 一ヶ月半程度の前倒しになるけれど、その程度なら問題もない。

 相変わらず浅く広く錬金術師をしているけれど、最近はなぜか開発系錬金術師と呼ばれている。

 俺が欲しい物は作るし、魔改造した設計図を丸投げしたりしてた。

 内緒だけど、粒々が完成品は作ってくれるからそれをそのまま丸投げして研究開発して貰ったりもする。

 そんな感じで新しい物を作り続けていたら、いつの間にかそんな肩書になっていた。

 俺が優秀とかって話じゃないんで肩身が狭いけどね。

 このチートっぽい能力も含めて俺の力って事だから諦めて貢献して、とはビアンカさんの意見。

 俺だって当事者じゃなければそう言うかもだけど。生活は便利な方がいいからね。

 まぁそんな感じで、この期間に伺いますよ、と各方面に連絡を入れてたんだけど。


『ちょうどいい。そろそろ体を入れ替えるつもりなんだ』


 先生がそんな事を言った。


『成功率は高いが失敗する場合もある。最後になるかもしれないから会えるなら会っておきたい』


 追い打ちをかけないでいただきたい!

 せっかく前向きになってたのにズーンと来た。

 なので旅行中はイーダとそれ関係の話をたくさんした。

 あと十年もしたらマティルデさんやエルンストさんだって体の入れ替え時期だとか。

 先生は元々寿命が短い種族だからもう四度目だとか。


「イーダ、前に先生が五十歳くらいって言ってなかった?」


『うん。マックスは元々の寿命が十五年程度らしいのだ。勿論改良を重ねているからもっと長く生きるのだけれども。やはり夜に寝て朝に起きられなかったらと、気が気ではなくなる時期があるそうでね』


 あー、それは、分かる気がしないでもない。

 成功例だとシュテファンさん?

 でもあれは体だけ子どもになっちゃったからタイムスリップ気分で失敗に入るのかな?

 エルンストさんはちょっと失敗って言ってたっけ。知識が残って記憶が消えたんだよな。

 知識がある分生き方は似そうだけど。

 例外なのか、マルレーネちゃんはあの環境に居てもなぜかメイドさんを目指しているらしい。

 なんだってまた? と思ったんだけれど、面倒をみられ過ぎて面倒見がよくなっちゃったんだってさ。

 研究バカな人が多いからお世話しなくちゃ! って場面にもよく遭遇したそうで、今のところそんな将来の夢を持っているんだって。

 案外そのまま薬系錬金術に目覚めてまた錬金術師になっちゃうんじゃないかとも思うけど。


「お部屋へご案内させていただきます」


 マティルデさんとはまた違った方向性のメイド姿はとても可愛らしかった。

 うん、どっちでも大丈夫。すくすく育って?

 って気持ちになりました。

 そして先生も。

 サッパリしたもので、


「完璧でしょう?」


などと乗せ換え予定の保存液漬けの先生の体を見せてくれた。

 見た目ほぼ一緒なんで、どこら辺が若返っているのか謎。

 もう少し年末になったら生命系錬金術師さんに入れ替えてもらうんだって。

 不安がないのか聞いたんだけれど、


「明日死んでも悔いのない生き方を心掛けなさい」


って真顔で返されたので、見習いたいと思います。

 もしも失敗してなにか問題が起きた時は、施術してくれる錬金術師さんが面倒を見てくれるらしい。

 失敗時連絡先リストに俺の名前を入れてくださいとお願いしたら、もう入っているよと笑われた。

 術後三日間は記憶の確認や知識の確認をするけれど、年始には体が新しいだけの先生になっているそうだ。

 不老不死の妙薬ではないけれど、賢者の石感はちょっとある。

 勉強がてら立ち会うか聞かれたけれど、冷静でいられる気がしなかったので断った。

 知らない人! 知らない人で実習します! はい!


「所変われば、なんですかねぇ」


 例えば元の世界にこの技術があれば。

 今頃向こうにも俺がいて、こっちにも俺がいて、みたいな事になってたんだろうか?

 両親も生きていて?

 ベストコンディションの前後何年かを延々と繰り返す。

 んん?

 なんか一気に羨ましさがゼロったな。

 そもそも羨ましいと思っていたっけ?

 いや、思ってないか。

 うん?


「死にたくない、と思った時に準備が出来ていないと死んでしまうのだから、事前準備は大切よね?」


「逆にもう死にたいと思うなら死ねばいいんじゃないか?」


「どうにもならずに死ぬ場合はありますけれど、ビアンカ様が生きている限りは御側にいたいとは思っていますよ?」


 キベン領の面々には俺の気持ちが伝わらずにそんな風。

 いや、知ってたけどさ。

 全員一致で疑問符で回答するの止めてね?

 あ、俺も疑問符だったわ。

 ビアンカさんはちょこちょこ体のパーツは入れ替えているらしい。

 国を治める立場になったからには全身総入れ替えみたいなギャンブルには出られないでしょう? だってさ。

 非常に軽いノリだった。

 

 なんだろうな?

 なんだかスッキリしない。

 年が明けて先生から成功の連絡も来て喜べはしたけれど。

 もやもやは晴れなくて。


『どういう形であれ、きっとイブキの最後は見送るよ』


 イーダが何の気なしに放った言葉が耳に残った。

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