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奇妙な錬金術師は堕ちて来た平凡な転移者です  作者: 弓軸月子


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105 番外編)友から知らされる真実(後)


「池の端に掃除機と授粉機が何台か置いてあって、水を吸引してゴミは貯めて水は吐き出す。吐き出しは下向きにしてるから池の底に水流ができてて、えーっと、真ん中に水石が置いてあるんだけど……」


 スクリューネジみたいな杭が打ってあって、水流でプロペラみたいなヤツがゆっくり回る。

 プロペラが杭の上まで行くと水石のスイッチが入って水が出る仕組みらしい。

 ちなみに水位が低いと小さな噴水みたいになるみたい。

 その噴水が見えなくなるまで水位が上がるか、プロペラが回り続けて水石ごと杭から外れたら、


「池に入ってプロペラを下げる」


そこは人力なんだ!

 錬金術品っちゃ錬金術品なんだろうけど、乱暴な作りだな。


「この村は水魔法が使える人が半分もいないから、毎回頼むのも気が引けてさ。イブキが水石と現金をくれてたろ? 授粉機のメンテナンスも何度か見たし、一から作るのは無理でも組み合わせればできるかと思って」


 だって。

 ドミニク考案で村人との合作、ってか、力作だ。

 掃除機が動けない様に足をもいで縄で括り付けてある辺りは泣かせるな。

 定期的に掃除機や授粉機に溜まったゴミは取り除かないといけないし、プロペラと同様に人力部分は多いけれど、


「水魔法が使えない人たちがいつの間にか集まってきてさ。みんなで手分けしてやってるから大変でもないよ」


とドミニクは頭を掻く。


「全身タイツ部隊にいた頃は、一つの物事をみんなで守ったり進めたりが退屈で窮屈だったけど、なんか分かった気がしたんだ。産まれた時からそうだったから、面倒だとか、なんでやらなくちゃいけないんだとか、思ってたけど」


 ああ、うん。

 俺も言語化するのは無理そうだけど、なんか分かるよ。


「最初から関わってればあんな事は……」


「そんなんたらればじゃん。今がイイ感じならそれで良くね?」


 お互いに今はここにいて、卵を挟んで話しているのだ。

 ほじくり返して煮詰めても時間の無駄にしかならない。

 言われてきょとんとしたドミニクは、少ししてカツカツとクチバシを鳴らして笑った。

 それからついでだからとゴーカートのメンテナンス。

 いつぞや俺が苦労した火石の部分も確認して、交換方法を伝えておく。

 ドミニクも知らなかったし、やっぱり劣化が早そうだったのでこのタイミングで伝えられたのは良かった。

 盗品だから修理にも出せないだろうしね。

 さて、そろそろ宿泊予定の錬金術師さんの所へ向かわないといけない時間。

 池の内容だけ再確認して、また明日と村を出る。

 その晩は家主の錬金術師と、テレビ電話で参戦したビアンカさんと、キベン国お抱え道具系錬金術師さんとで盛り上がった。

 池の話から水飲み場の話になり、公共事業の話になった辺りで通話は切ったけどね。

 翌日は錬金術師さんと一緒に池まで行き、ほんの少しだけ池を改良した。

 掃除機は掃除機だし、授粉機は授粉機なのだ。

 そんな時はこちら!

 吸水機と配水機を上下に合体させ片側にゴミ用タンクを付けた人口池機一号!

 タンクがいっぱいになったら新しい水も出る仕組みである。


「水が出始めたらゴミ捨て時。一応、吸水機も配水機もゴミが燃料になるけど、いっぱいになると止まっちゃうから、そこは人力で頑張って。四ヵ所だけだから」


 販売中のところ悪いのだけれどと、池の周りから少し離れてもらって、掃除機と授粉機を回収。

 回収ついでに等間隔に四ヵ所、人口池機に設置。

 途中でざぶざぶと池の真ん中まで行って水石と杭を引っこ抜いて水石も回収。

 そのまま中心点になる磁力を帯びた石を埋め込んでたら、外側にいる錬金術師さんの設置作業も完了。

 よし、行きますか。

 真ん中から設置した人口池機に向けて設計図を四枚浮かべる。

 それから水に溶ける糸が出るペンで四枚の設計図を一枚にするイメージで繋いでいく。

 池の外からは錬金術師さんが、設計図を時計周りに流しながら人口池機の前に浮かべ、同じく一枚になる様に繋いでいる。

 繋ぎ終えたのを確認し合って、回収したばかりの水石で波紋を起こした。

 範囲指定。

 対岸の跳ね返りを見て水圧とか水流の調整をするのは先輩錬金術師にお任せ。

 無理無理。そんな細かい調整。

 終わる頃には池の周りに八枚の設計図が等間隔に並び、最後の仕上げに土石をカッカッと鳴らして完成。

 スイっと池の淵に設計図が吸い込まれていく。

 パァッと、それこそ噴水みたいに、一瞬水が踊ってピタリと鏡みたいに澄み渡って制止した。

 池の外には水が溢れることも跳ねることもなく、大成功。

 俺?

 ずぶ濡れに決まってるよね。


「脱いで入れば良かった……」


 靴、靴は脱いだしズボンは膝までまくったのに……。

 池から上がって装備品を脱いでる間に、錬金術師さんは人口池機の側に土を放り込んだりして動作確認を始めた。

 任せて取りあえず身を整えねばと、脱いだ装備をイーダに渡して乾かして貰いつつ、ポンチョの水をバサバサ払う。

 ふと視線を感じて振り返れば、池の周りで販売していた人なんかの視線が集まっていた。

 あ、人間だとダメな村かな?

 距離があるから急に襲われるとかはなさそうだけど、いつでも動ける様に足位置をずらしたところでドミニクが言った。


「やっぱり火傷のせいで毛が生えなくなっちゃってるんだな」


 めちゃくちゃ深刻そうなんだけど、え? なに? 腕毛の話?


「火傷のとこだけな? 他は一応生えてるから」


「いや、それにしたって薄い! ビアンカ様なんかもじゃもじゃじゃないか!」


「お前っ! 聞かれたら殴られるぞ! 全然もじゃもじゃじゃないだろ!」


 同じ人間だから比較対象で言ったんだろうけれど、女子にそれは禁句だから!


「皮膚と近い色だから目立たないだけであの人はもじゃもじゃだ!」


「うわぁ、もう、むしろエルンストさんに首をへし折られるぞ!」


「なんでだよ! 凄く褒めてるのに!!」


 は?

 イーダを見る俺。

 勿論毛なんてひとつも生えていない。


「……二足歩行種は体毛の面積が広いほど美しいとされているよ。私はそのような基準は持ち合わせてはいないけれど」


 ああああ! ちょ、イーダさん? 言外に醜くても問題ないよって聞こえるんだけど?


「鳥類だから余計にそう感じるのかもしれない。長くて毛先まで綺麗でカラフルだと思わず凝視しちゃうとかもあるし」


 気にすんな風のドミニクの言葉に、聞き耳を立てていた池周辺の人々もウンウンと頷いている。

 トドメは錬金術師さん。


「ああ、昨夜の女王様か! 確かに美しいもじゃもじゃでしたね!」


 テレビ電話で分かる程? 俺の目が腐っちゃってんの?

 その後はみんなして、


「兄ちゃん毛が薄いくらいでそう落ち込むな、錬金術はすごかった! 池をありがとう!」


とか言って、果物やら籠やら布やらを押し付けて行った。

 この世界の常識、俺にはまだまだ理解が遠い。


 この後元々の翻訳がまるっと不適当だった事が判明。

 もじゃもじゃは、天然パーマってか、毛並み? とか、絡まったなにかにあてはめてたんだよね。

 ビアンカさんはくせ毛という言い方をしていたから別物かと思っていたんだけど。

 どうやらその時は寝ぐせとか帽子の跡とか、ちゃんとクセの話をしていた模様。

 美しいウェーブとか、そんな訳になるのかな?


『会話がおかしいのなんて今更じゃね? 普段からタメ口に敬語が混ざってるし、たまに命令形になるし』


 と本日二度目のトドメはイーダ経由のドミニク発言。

 俺としては、元気? これ食べる? が、貴様はいかがお過ごしでしょうか? 食べろ! みたいな発言になってるっぽい。

 ……もう今更辞書の直しとか無理だし、それで覚えて翻訳機無しで喋っちゃってるよ、俺。


 そんな、色々と知りたくない事を知る旅だった。

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