【Dパート】
おまたせしました!
「そこまでよ‼」
「この流れはまさか!?」
すごい聞き覚えのある声がした方向に振り向くと、商店街の看板の上には、まるで魔法少女のような姿をした妹・逸子の姿があった。
「お待たせ、お兄ちゃん! 黒雷の使者! マギノワール参上‼」
「うん、予想はしてた」
そう言って、戦闘ポーズを取る逸子こと黒き戦士! マギノワール!
だが薫の反応は最早、想定の範囲内と冷めたものであった。
「むぅ、妹が変身ヒロインなのには驚かないの?」
「驚いてるけど……」
祖父が改造人間。
父が宇宙人で母が宇宙婦警の時点で慣れちゃったと言うべきか。
「なんだよ~! せっかく驚かそうとタイミング伺ってたのに~」
「タイミング伺ってたなら、さっさと助けてくれよマジで。って言うか、なんで魔法少女なんかになってんだよ?」
「いや~、ちょっと前にスカウトされちゃって」
「お前……それ一番たち悪いパターンじゃん」
昨今、魔法少女の業界はヤバい所ばかりだ。
善意に付け込んでで労基法違反の条件で働かせたり、契約を盾に脅したり、最悪最後の一人になるまで殺し合わせる場合だってあるらしい。
しかし、妹は「大丈夫だよ」とあっけらかんと答えた。
「ちゃんとしっかりした条件で契約したもん。ね? マスコットン?」
「えぇ。妹さん方には法的に問題のなく、日常生活に支障がでない範囲で活動してもらっております」
「しっかりしてそうなマスコット出てきた!」
妹の肩からひょっこり現れたのは、黒縁メガネに七三のいかにも真面目そうな妖精・マスッコトンであった。
「特に未成年であるため、強敵との戦いは我が妖精界の特殊チームが行い、逸子さんは最後に闇のエナジーを浄化する作業だけ行ってもらっております。無論、学業面のフォローも担当の者が行っておりますし、場合に応じて危険手当も支給されます」
「滅茶苦茶しっかりしてるぅぅぅぅぅ! しっかりしすぎて夢も希望も感じない!」
なんでも一時期、カルトや詐欺紛いの勧誘方法で業界があれたのを切欠に、法規制が強化されたらしい。
「ちなみに我がチームは現在追加戦士として『光堕ち』枠を募集中でして、そちらのお嬢さん、魔法少女に興味ありませんか?」
「ここぞとばかりにスカウトすんな」
「……時給は?」
「お前も乗るな」
これ以上、事態をややこしくしないでくれ。頼むから。
「って言うか、チームってことは、最低でもあと一人いるってことだよな?」
「そうだよ。お~い、ブラン! 出てきて~」
そう言って妹改めノワールの呼びかけに、一人の少女が舞い降りた。
「白雪の使者! マギブラン‼」
ビシッっとポーズを決めるのは、純白の衣装を血で染めた白き戦士! マギブラン!
「ちょっと待っておかしい!?」
「二人は、リリズマギカ‼」
「待ってって言ってるでしょ‼」
決めポーズを取る二人を、中断させ、薫はツッコミを入れる。
「なんなの!? なんで、お前の相方血まみれなの!? 既に一仕事終えた感じだよ!?」
最早ツッコミどころ満載の相方にツッコミを入れる。
「白雪の使者って自分で名乗ってるでしょうが!? なんで血まみれ!?」
「あぁ、それには事情があって……」
「事情ってなに!? なにがあったら、既に相方敵を殺ってますみたいになるの!?」
「その娘、ちょっとヤンデレの気があって、今日もデートすっぽかした相手の浮気を疑って……ね?」
「『ね?』じゃねーよ!? なにその意味深な一言!? 殺したのか!? 仮にも正義のヒロインがヤンデレ拗らせて殺っちゃったのか!? そこら辺、マスコット的にどうなの!?」
「妖精国の方針上、プライベート、特に恋愛面は個人の意思を尊重しておりますので」
「尊重した結果、大惨事になってるんだけど!?」
「悪いのは列斗さんなんですよ? 最近、私に隠れて女に会ってるみたいで……だから、永遠に私のものにしたくって……」
「赤井ぃぃぃぃぃ!? なに!? 赤井と付き合ってたのキミだったの!?」
突然、知らされた衝撃の事実と友人の訃報!
二重の衝撃が薫を襲う、その時だった。
「呼んだか、薫!?」
「赤井!? 無事だったのか!?」
「あぁ、なんとかな‼」
そう言って現れたのは、電柱の天辺に、包帯まみれの姿で佇んでいた赤井の姿であった。
「いや、全然大丈夫じゃないだろ!? って言うか、お前まで、なにしてんの!?」
「ふっ、怪我を堪えて病院を抜け出すのも、またヒーローの王道って奴だ」
「怪我の理由がアレすぎるんだが……って言うか、まさかお前も!?」
「お察しの通り! 変身!」
そう言って、電柱から飛び降りた赤井は強化服を纏った、紅蓮の戦士へと姿を変えた。
「き、貴様は自由戦隊フリーダムレンジャーのレッド!?」
「久しぶりだな、ジョーカー大首領! 今日こそ、決着をつけてやる‼」
「あ、敵対してたのお前んところだったんだ」
最早、驚きすらないほど慣れてしまった薫。
そう言えば、最近つき合い悪くなったけどヒーローやってたんだ。
「今まで隠してて悪かったな! 俺たちが来たからにはもう安心だ!」
「いや、俺たちってお前、仮にも戦隊なのに一人じゃん」
普通、戦隊と言えば5人が相場と決まっているのだが?
すると赤井は「心配ご無用! 残りの三人は今から来る!」と高らかに叫んだ。
同時に空から一人のヒーローが現れた。
面白いと思っていただければ、お手数ですが「いいね!」もしくは、下の☆☆☆☆☆から評価ポイントを入れて下されると幸いです。
むしろ、両方やってください!
この作品の大体の世界観が分かる作品のあれこれ
追放されし者たちの話
https://ncode.syosetu.com/s1979f/
作者の人間性が大体わかる作品のあれこれ
世にも奇妙な王道ファンタジー
https://ncode.syosetu.com/s6617g