表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/7

【オープニング】

遅くなったけどメリクリってことで。

 悪の組織と正義の味方が日夜戦う、とある世界。


 滝薫たきかおるが、その少女と出会ったのは、薄暗い路地裏だった。

 数日前に飼っていた柴犬が行方不明になってしまい、その日もSNSを頼りに探していた。

 しかし、いくら探せど見つからず、代わりに黒いタイツのようなスーツを着た、一人の少女が見つかった。


(こいつ、最近噂のジョーカーの戦闘員じゃないのか!?)


 その特徴的なスーツに見覚えがあった。

 近年、世界各国で驚異的な科学技術を駆使し、地球侵略を企む悪の組織『ジョーカー』

 彼女が着ているのは、そこに所属している戦闘員が着ている制服であった。

 ネットやニュースの映像で観たし、たわわな胸元には、組織のシンボルである『J』の文字が書かれてるし、間違いない。


「な、なんで、ジョーカーの戦闘員がこんなところに!?」


 警察に連絡をすべきだろうか?

 それとも、見なかったフリをする?

 近くに怪人がいるんじゃないか?


 予想外の状況に、様々な考えが浮かび上がり、混乱する薫。

 そんな時、戦闘員が「う……うぅ……」と苦し気に呻き出した。

 よく見たら、身体の至るところに傷跡があった。


(ど、どうしよう……)


 本来なら、然るべき組織に突き出すのが一番良いだろう。

 しかし、薫は例え怪人であっても、怪我人を見捨てる程、薄情者ではなかった。

 悩んだ末、薫は着ていたパーカーを怪人に被せ、カモフラージュしながら、自宅へと背負って帰ることにした。


 帰宅後、妹から「お兄ちゃんがエロい格好させた女の子連れてきた!」と、誤解を招きかねない発言をし、祖父・父・母からしばかれそうになったが、それは置いといて。

 事情を説明し、母に傷ついた少女戦闘員の手当てをお願いする。


「う……ここは……?」

「あ、目を覚ました」


 しばらくして、意識が回復。家族総出で事情を聞くことに。


「実は私、量産型戦闘員の中でも珍しく自我に目覚めて……」


 曰くジョーカーの戦闘員は命令に忠実であることが第一であるため、自我に目覚めた個体は廃棄されるという。彼女も例外ではなく、処分の対象だったが、幸か不幸か、ヒーローが殴り込みをかけ、基地は壊滅。

 運よく五体満足で脱走できたものの、行く宛てもなく途方に暮れていたと言う。


「でも、どうして基地の場所ばれたんだろう? あれかな? SNSにアップしたからかな?」

「絶対それだよ」


 どうやら自我は芽生えても、職業倫理は芽生えなかったようである。

 兎にも角にも、連れてきた手前、放り出す訳にもいかない。

 幸いにも薫含め我が家は全員、お人よし。

 彼女を匿うことに反対する人間はいなかった。


「そう言えば、キミ、名前とかあるの?」

「ない。強いて言えば番号。I―50って呼ばれてた」

「んじゃ『アイコ』で」

「安直」

「やかましい」


 そんなこんなで、戦闘員改めアイコは我が家の一員になった。

 当初、悪の組織の戦闘員ということで、馴染めるかは不安だったが、意外とすんなり馴染んでいった。

 どのくらい馴染んだと言うと――


「薫君、大好き♪」

「そんなこと言って、俺のアイス食べた件と、セーブデータ上書きした件と、映画のネタバレした件を誤魔化そうとしても無駄ですよ?」

「ごめんちゃい」

「まったくもぉ~」


 ……とこれ位である。


 学校にも通うようになり、クラスにも溶け込んでいった。

 親友の赤井列斗あかいれつと曰く。


「クールに見えて、意外とお茶目なところがいいんだよなぁ」

「お茶目すぎると思うけど?」

「いやいや、人間茶目っ気は大事だよ? 俺の彼女も普段はクールなんだけど『浮気したら刺しますよ?』って冷凍イカみたいな目で、ナイフ片手に冗談言うくらいにはお茶目だし」

「それをお茶目ですますな!」


 アイコよりも親友が心配になった。

 ともかく、こうして戦闘員と一つ屋根の下で暮らすと言う、とんちんかんにも程がある生活は、特に何の問題もなく過ぎていった。


 だが、平和と言うものは容易く崩れ去るもので……


「薫君、だぁいすき!」

「そんなこと言っても、掃除の時、俺のベッドの下に隠してたエッチな本を机の上に積んだことは許しませんよ? しかもご丁寧にジャンルごとに分けやがって」

「ごめんちゃい」

「まったくもぉ~……ッ!?」


 その日も自宅でいつもの茶番劇を繰り広げていると、突如、商店街の方で爆発音が鳴り響いた。

 慌てて外を見てみると、空中にホログラムが出現。

 黒い軍服を纏ったいかにも悪人のような男が映し出された瞬間、アイコは驚愕した。


「あれはジョーカー大首領!」

「あれが!?」


 敵の大首領の登場に驚きを隠せない中、大首領の演説が始まった。


『愚かな人類よ! 今日、我々が来たのは他でもない! 我らが裏切り者の戦闘員I―50を粛正するために来たのだ!』

「!? 嘘だろ、おい!?」


 たかが一戦闘員に大首領自らが出陣とは、尋常ではない。

 アイコも怯えているのか、肩を震わせる。

 そんな中、大首領の口から驚きの真実が語られる。


『このI-50は戦闘員と言う立場でありながら、我らが基地の情報をSNSに投稿。情報を漏洩させた罪人である‼』

「あー……うん、そう言えばそうだったね……」


 って言うか、そんな話を今さら持ち出されても……

 そんなことを考えていると、さらに驚愕の事実が判明。


『さらには! 大首領の我に対する狼藉の数々! 許されるものではない!』

「狼藉!? なにしたの、この娘!?」

『我が仮眠中に油性マジックで額に『肉』と書いた上、眉毛をごんぶとにし、命令には舌打ち! あまつさえ、我が肖像画をダーツの的にしてやがった!』

「まぁまぁやらかしてた!? なにちょっと、被害者面してんの!?」

「ごめんちゃい」

「まったく、もぉ‼」


 って言うか、そこまでやられたなら、もう少し早く自我の有無に気づけよ。


『おまけに最近では、こやつの影響からチラホラと自我が芽生える戦闘員が増加! 目の前で転職サイトや求人誌を読み漁る者まで現れる始末だ!』

「それは関係なくね?」


「なんかちょいちょい小物臭いな。大首領なのに」と内心ツッコむ。


『故に見せしめに処刑する! SNSでここにいることは判明しているのだ! 隠れてないで出てこい! さもなくな、この街を壊滅させる!』


 流石は悪の大首領と言うべきか、やることが容赦ない。

 このままでは、大量の犠牲者が出かねない。

 しかし……




(そこまで言われて、はいそうですかと渡せる訳ないだろ……!)


 短い間だが、家族として共に過ごしてきたのだ。

 そんな彼女を引き渡して、自分が助かるなどと言う、恥知らずな行動は最初から除外していた。


 なんとか、両方助ける方法はないか。無い知恵を絞る薫。

 しかし、アイコは驚きの行動に出た。


「薫くん、ここでお別れだね……」

「!? なに言ってんだよ!?」

「ごめんね、でもこのままじゃ、みんなに迷惑かけちゃうから……」


 そう言って、彼女はベランダに出て、飛び降りた。


「今まで、楽しかった。思い出をくれてありがとう」

「アイコ!」

「アイス勝手に食べたり、セーブデータ上書きしたり、映画のネタバレしたりしてごめん」

「いや、そんなのどうでもいいから‼」


 それだけ言うと、彼女は大首領の下へと向かってしまった。


「くそ! これでサヨナラなんて言わせないぞ!」


 自己犠牲なんて認めないとばかりに、薫はアイコを止めるべく家を飛び出した。





登場人物紹介は最後にまとめてやります☆


 面白いと思っていただければ、お手数ですが「いいね!」もしくは、下の☆☆☆☆☆から評価ポイントを入れて下されると幸いです。

 むしろ、両方やってください!



この作品の大体の世界観が分かる作品のあれこれ


追放されし者たちの話

https://ncode.syosetu.com/s1979f/


作者の人間性が大体わかる作品のあれこれ


世にも奇妙な王道ファンタジー

https://ncode.syosetu.com/s6617g

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] アイコのスリーサイズ
[一言] > 数日前に飼っていた柴犬が行方不明になってしまい、 ワフっ!(*_*) し・・・柴犬飼われてませんよW 飼われるなら十代の少女と決めております。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ