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お酒のせい


目を開けるとベッドにいた。

「うっ」

頭が痛いような気がして手を当てる。


「大丈夫か?水飲め」

レオンが心配そうに顔を覗き込み、コップを差し出してくれた。

ありがたくそれを受け取り、ちびちび飲む。


白ワインを飲んでしまって倒れたことをはっきり覚えていたので小さくなる。

「ごめんね」

ベッドまで運んでくれたと思うと申し訳なさが増す。


「いや、俺も紛らわしいところに酒を置いたから」

レオンはお酒が強い。家にいるときはそんなに飲まないが、今日は休日だったので、飲もうとしていたのだろう。


反対に私はお酒が全く飲めないのである。

20歳になった時に、学生時代の級友たちと一緒に飲んだのだが、その時も倒れてしまった。

あの時もレオンが家まで運んでくれたっけ。


私もレオンと一緒にお酒も飲みたいのに。

体質的にどうしようもないが、結婚している同僚が毎日旦那さんと晩酌をしていると聞いて羨ましさがあった。


「あっ!ごはん!」

せっかくレオンが作ってくれたおいしいごはんだったのに、途中で終わってしまった。

しょんぼりと肩を落とす。


その様子にレオンが笑った。

「大丈夫、置いてあるから。落ち着いたら食え」

「ほんとう?!ありがとう」

目を輝かせる。よかった、ちゃんと置いておいてくれたんだ。


「食い意地はってるなぁ」

レオンが笑うので、少し恥ずかしくなって毛布で顔を隠す。

「ちがうもん。レオンが作ってくれたから」

虚をつかれたように、レオンの動きが止まる。


「というか、いつもごめんね。あんなに料理うまいなら、私の料理なんかだめだめだね」

必死になれない手つきで作っていたが、レオンの料理の腕前に比べたら、ミジンコレベルである。


なにが胃袋をつかむだ。私の方がすっかりレオンの料理に胃袋をつかまれてしまった。

これからどんな顔をして、ごはんを出そう。


「本当にソフィアの料理はうまいよ」

「えっ。そんな気をつかわなくていいから」

普段憎まれ口ばかりのレオンの優しい発言に逆につらくなる。


「ちがうって。ソフィアが俺のために作ってくれたと思うと、すごくうまい」

ちょっと照れたようにレオンが言う。

レオンがそんなことを言ってくれるなんて。


「ありがとう。そういってくれると嬉しい。私、頑張るから」

いつかレオンよりうまくなってみせる。

そして本当に胃袋をつかみ、レオンに私のことを好きになってもらうのだ。


「今でも十分おいしいけどな。期待している」

ぽんぽんと頭を撫でられて顔が赤くなる。


「あっ、あと、お前外ではお酒飲むなよ」

レオンが思い出したように念押しする。

「わかってるよ。迷惑かけてごめんね」


「いや、そうじゃなくて。初めてお酒飲んだ日もそうだったけど、お前、寝言みたいなのすごいから」

「えっ?!やだ、なんて言っていたの?」

当たり前だが自覚症状がなかったので怖い。


というかお酒のせいなのだろうか。

「私ってもしかして普段から寝言うるさい?」

「いや、それは知らないけど」


そう、私たちは恋人同士で結婚したわけではないので、寝室が別々なのだ。

引っ越しをする時、私はこれから一緒に寝ると思って楽しみにしていた。

しかしレオンが当たり前のように別々の部屋にベッドを搬入してもらったので、がっかりしたのである。


「ねぇ、明日も休みだし、今日一緒に寝てくれない?」

「はっ?!」

気軽に言うと、レオンが仰天したように声を出す。


「だって普段から寝言言ってるのか気になるし、確認してもらおうかなって」

そもそもどんな寝言なのだろう。

レオンは口をパクパクさせて、視線をさまよわせた。


しばらくして口を開く。

「今日だけだぞ」

今日だけって、そんなに私と寝るのが嫌なのだろうか。

「わかった」

内心傷付いていたが、とりあえず今日は一緒に寝てくれるようなのでうなずいた。



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