お祝い
翌日、会社に出勤するとめでたく試験の合格が言い渡された。
それで小躍りしながら、昼休みにハンナにレオンからのプレゼントの相談をする。
「一択よ」
話を聞いたハンナが迷わずうなずく。
「一択?」
ネックレスとかかな。私もいいと思っていたのだ。
高いのを買ってもらうつもりは全くない。
しかし身につけることができてよいかなと考えていた。
ハンナが内緒話をするように、ぐっと私の耳元に口を近づける。
「キスをお願いするのよ」
「キ、キス?!」
素っ頓狂な声をあげ、ハンナの顔を見る。
「あのね、ソフィア。1週間後に離婚されちゃうかもしれないのよ!この1週間が勝負なの!ぐいぐいいかなきゃ」
ハンナに指摘され、真顔になる。
言われてみればその通りだ。
この1週間で『幼馴染』ではなく、恋愛的に好きになってもらわなければ。
「あなたたちに必要なのは関係性の変化。少しでも意識してもらわなきゃ」
ハンナの言葉にこくこくとうなずく。
「あの、でも断られたら…」
というか真顔で何言ってるんだと言われる可能性も高い。
ハンナが小さくため息をつく。
「言いにくいけど、キスを拒否されたらその時点でなしよ。恋愛対象じゃないってことだし、離婚するしかないわ」
「うっ…」
そんなリスクの高いお願いごとできるだろうか。
「いつかは向き合わなきゃいけないのよ。それなら後悔ないように、思い切って行動した方がいいんじゃない」
「ハンナ、ありがとう。たしかにその通りだわ。私、頑張ってみる」
そうだ、行動しないと何も変わらない。
「がんばれ」
ハンナの激励に力強くうなずいた。
帰宅後、夜ごはんを作り、そわそわとレオンの帰りを待つ。
「ただいま」
帰ってきた!
「おかえり」
玄関に飛び出す。
「おっ、その感じ試験受かった?」
私の顔を見て、レオンがにやりと笑う。
「えっ、わかる?」
「わかる。ソフィアは落ちてたら、絶対顔に出る。もっとテンション低くなる」
お見通しで恥ずかしい。
連れ立ってリビングに入る。
「おめでとう、頑張ったな」
優しい声で頭を撫でられ、それだけで充分なお祝いな気がして満足しそうになる。
「ありがとう。倒れて迷惑かけてごめんね。受かっててよかった」
これで落ちていたら申し訳なかった。
改めて受かっていてよかった。
「夜ごはん食べよう」
二人で向かい合って、食事を始める。
いつ言おう。お祝いを自分から言うのもおかしいか。
ちらちらとレオンの顔を伺う。
「お祝いなにがいい?もう決まった?」
するとレオンの方から言い出してくれた。
ごくりと唾を飲み込んだ。
やっとシリアス展開?からハッピーに戻ってきました!
まだ問題は残っていますけども!
そろそろ完結予定です。できれば年内にと思っています。
ここまで読んでくださっている方、本当にありがとうございます。
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