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マフラー


腕を上に伸ばし、上体を逸らす。

「終わったー!」

やっと試験が終わり、解放感に浸る。


倒れてしまった翌日、しっかり寝て体調を戻した。

そこからは無理のない範囲で、最後の追い込みをし、今日無事に試験を終えた。


帰ったらレオンにマフラーを渡そう。

結局倒れてしまった手前、言い出しづらく、マフラーを渡し損ねていた。


足取り軽く、家に向かう。


「ただいま〜」

「おかえり。おつかれさま」

意気揚々と扉を開けると、レオンが出迎えてくれる。


「ありがとう!手応えありだよ!」

「うわっ」

試験から解き放たれて、気持ちが高まっていた私はレオンに飛びつく。

レオンが慌てて私を抱き止めてくれる。


「それはよかった」

レオンが私を見つめ、微笑んでくれる。

「ありがとう。この1ヶ月というか、特に最後の1週間は本当にごめんね。迷惑かけました」

レオンから離れ、ぺこりと頭を下げる。


「いや、俺は結局何にもしてやれなかったし」

自嘲気味にレオンがつぶやく。

「えっ、なんで?精神的にすごい支えてくれたし。家のこととかは私が勝手にやったことだから、そんな顔しないで」


家のことが疎かになったのでは意味がない。意地になっていた私はレオンが帰ってくるまでに毎日夜ごはんを作っていた。


全部自己満足である。

それなのにレオンは申し訳なさそうに眉を下げる。


あれ?おかしいな。

こんな顔をレオンにさせたかったわけじゃないのに…

むしろ頑張っている自分を認めて欲しかったのに。


やっぱり倒れたのがよくなかったのだろうか。

気分が沈みかける。


だが、脳裏にマフラーのことがよぎった。

「あっ、そうだ!レオンに渡したいものが!」

「なに?」

「こっち来て」


レオンを私の部屋に引っ張っていく。

「これ!」

ラッピングしたマフラーをレオンに差し出す。


「何これ。俺の誕生日まだ先だけど」

レオンが不思議そうに包みを見る。

うっ、やっぱりなんでもない日に渡すのは変?

「えっと。その、お礼というか、まぁ、受け取って!」


レオンの胸にどんと押し付ける。

「お礼?」

首を傾げながら、レオンがリボンをほどいて、中身を取り出す。


「あっ、マフラー?俺が欲しいって言っていたから?」

「うん、そう」

嬉しそうにマフラーを見るレオンに照れくさくなって下を向く。


レオンがマフラーを首にかける。

やっぱりシルバーアッシュの髪色とアイスブルーの瞳に紺色がよく似合っている。

「ありがとう。これから使うよ」

レオンが柔らかく微笑む。


「へへっ」

「もしかしてソフィアが編んだ?」

マフラーをじっと見ていたレオンが言う。

「うん。手作りなの」

するとレオンが微妙な表情になる。


「あっ、ごめん。手作り嫌?気に入らなかったらつけなくていい」

ちょっとショックだけど…やっぱり手作りは重いかな。


「すっげぇ嬉しいけど。いつ作ったの?」

顔を上げると、レオンが目をすがめる。

「その、えっと。まぁ」

しまった、倒れてまで作ったマフラーとなるとだいぶ感じが悪い。


レオンが軽くため息をつく。

「お願いだから無理しないで」

うぅ、たしかに倒れて迷惑をかけてしまったので何も言えない。


喜んでもらいたかったのに。

私は何をやっているんだろう。

我慢しようと思ったのに、涙が一粒落ちてしまった。



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