本末転倒
まぶしい光に目を開ける。
「んっ…」
「おはよう」
目をこすっていると、近くでレオンの声が聞こえた。
「わっ、おはよう」
そういえばレオンに抱きしめて寝てもらったのだった。
「はぁ、よく寝た…って今何時?」
よく寝たというか、寝すぎた気がする。
窓の外の太陽がずいぶん高い位置にいる。
「もう昼前」
「うそっ!」
レオンの返答に目を丸くする。
「えっ?レオンもしかして起きていたけど、ずっとここにいてくれたの?」
一体いつから起きて、私が起きるのを待ってくれていたのだろう。
レオンが少し動揺したように視線をさまよわせる。
「いや、別に。寝れたのならよかった」
「そりゃ、もうぐっすりと。ありがとうね」
だが、正直寝すぎた。
体はすっきりしたが、遅れを取り戻さなければ。
そしてそこからまた五日間。
私は必死に勉強と編み物に取り組んだ。
時々レオンが何か言いたげに私を見ていたが、もうすぐマフラーが完成するのである。
私はその視線から逃れるように夜は部屋にこもり、作業に勤しんだ。
「できた」
ついに出来上がったマフラーを手に大喜びする。
我ながら上出来である。
明日仕事から帰ってきたら、レオンに渡そう。
驚くかな。渡した時のレオンの顔を思い浮かべ、にやにやと笑みがこぼれる。
窓の外がじんわりと明るくなってきている。
まずい、もう明け方だ。
レオンが起きる前に布団に入っておかないと。
急いで寝室に向かった。
翌日、レオンが私の顔を見て、眉を顰める。
「ソフィア、あんまり寝ていないだろ」
「大丈夫。今日はさすがにゆっくり寝るから!」
寝不足の顔を見られたくなくて、家を飛び出す。
そして職場に行くと、ハンナも私の顔を見るなり、目をぎょっと見開く。
「大丈夫?顔色悪くない?」
ハンナが心配そうに私の顔を覗き込む。
最近ハンナに心配させてばかりだな。
たしかにそういわれてみれば、今日はなんだか体がだるい。
「大丈夫!マフラーやっとできたの!」
「おっ、それはよかった。けど本当にちゃんと寝なよ」
「うん、今日からは本当に寝る」
試験勉強の方も順調に進んでいるので、今日から残り一週間ほどはもう少し、余裕を持って取り組むつもりである。
それにさすがに自分の体力の限界を感じる。
「今日の仕事、無理しないでね」
「ありがとう」
いけない。本業は仕事なのに、試験や自分の都合で迷惑をかけるわけにはいかない。
頭を振って、仕事に集中した。
帰り道。仕事を乗り切ったことで、緊張の糸が途切れたのか、体のだるさが増していた。
「ああ、これは熱あるな」
仮にも救護団である。熱をはからずとも、自分の体調不良を自覚し、苦笑いした。
ふらふらと家に向かう。
「ソフィア!また会ったね」
うれしそうな声が聞こえ、振り返ろうとしたが足がふらついた。
「ソフィア!」
メルヴィルの叫び声が聞こえたが、返事ができなかった。
私は意識を手放し、ばたりとその場に倒れてしまった。
次に目が覚めたら、見慣れた自分のベッドにいた。
飛び起きると、扉の外から言い争いのような声が聞こえる。
「だから運んでくれたのは感謝しているけど、もう帰れって。ソフィアも今日はゆっくり寝かせないと」
「いいや。僕はソフィアに言いたいことがある」
レオンとメルヴィルの声である。
やってしまった。
倒れた私をメルヴィルが運んでくれたのか。
そして今、レオンが仕事から帰ってきたところか。
二人に謝らなければ。扉を押し開いた。




