一生懸命
「ソフィア料理さらにうまくなったな」
「本当?」
レオンが晩ごはんを食べながら褒めてくれる。
目を輝かせて聞くと、優しくうなずいてくれる。
「始めも本当においしかったけど、最近凝った料理増えたな」
レオンの言葉に照れる。
結婚してから3ヶ月と少し。
だんだんとできる料理も増えてきたし、手早くできるようになっていた。
相変わらず休日はレオンが作ってくれている。
私たちは仲の良い夫婦になってきているのではないだろうか。
「私、1ヶ月後の試験に向けて、今日から詰めていくから。夜は先に寝といてね」
生活にも慣れてきたので、仕事の薬に関するさらに難しい資格を取ることにした。
別に取らなくても業務にはなんの問題もない。
しかしレオンもなんでも一生懸命な子がタイプと言っていたし、何かもっと頑張りたくなったのだ。
「分かったけど、無理するなよ。夜ごはんも俺が作るけど」
レオンが心配そうに私を見る。
「大丈夫、大丈夫!体力には自信があるし。夜ごはんも私の方が帰ってくるのはやいし、いつも通り作るよ」
ふんっと力こぶを作り、レオンに見せる。
これで夜ごはんをレオンに作ってもらうのは本末転倒である。
家事も仕事もどちらもこなしたい。
「本当にしんどくなる前に言えよ。あと夜はちゃんと寝ること」
「ありがとう」
まるで親のようなレオンに笑う。
さっそく今晩から頑張ろう。
夜、私は机に向かっていた。
試験に向けて前からそれなりに準備をしていたのだが、やはり本腰を入れて勉強を始めるとまだまだ足りない知識がある。
そして実はもうひとつ。
試験とは別に頑張りたいことがあった。
編み物である。
最近少し肌寒くなってきて、レオンがマフラーを新しいのに変えるか迷っていたのだ。
手作りは重いかもしれないが、編み物は経験もあるし、上手にできる自信があった。
どうせ勉強の集中力もずっとはもたないし、息抜きがわりにもなる。
キリのいいところまで勉強か進んだので、編み棒を動かす。
レオンに似合いそうな紺色の毛糸を手に入れてきた。
レオンがつけている姿を想像すると、編み棒がさくさく進む。
そうしてだいぶ棒を進めて、はたと我に返る。
凝った編み方をしているので、作品自体はまだ完成にはほど遠い。
しかし時計の針はだいぶ進んでしまっている。
いつも寝る時間を3時間ぐらい過ぎている。
「しまった。明日も仕事なのに」
つい夢中になってしまった。
急いで片付けて、寝室に向かう。
そしてレオンを起こさないように、そっと自分の布団に潜り込む。
編み物に気を取られて、試験に落ちたのでは格好がつかない。
明日はもう少し勉強の割合を増やそう。
さっきまでは意識していなかったが、眠気はとっくに限界だったようだ。
布団にくるまれるとあくびが出た。
そして目を閉じると、すぐに夢の世界に吸い込まれた。




