恋人繋ぎ
サーカスが始まった。
軽快な音楽と共にピエロやライオンが次々と現れる。
「わぁ」
火の輪をくぐり抜けたり、ボールの上でジャグリングをしたり目が離せない。
空中での綱渡り。
見ているこちらが不安になって、思わず隣のレオンの手を掴む。
縄がゆらりと揺れる。
「あぁ!」
演出だと思っていても、手に力が入る。
すると握っていたレオンの長い指が、私の指に絡められる。
「えっ」
こ、これは!恋人繋ぎというやつではっ!
レオンの顔を見上げるが、レオンは真っ直ぐ綱渡りを見ている。
動揺しているのは私だけのようだ。
この握り方は恋人しか許されないやつかと思っていたけど、私が意識しすぎ?
レオンの真似をして、とりあえず手はそのままに前を向く。
緊張して手汗かきそう。
サーカスに夢中だったのに、今は繋いだ手を気にしてしまう。
そんなことを考えていたら、サーカスはいつの間にか終わってしまった。
「初めて見たけどおもしろかったな」
レオンが手を繋いだまま立ち上がる。
「あっ、うん!そうだね」
途中からはあんまり集中できなかったけど。
慌てて立ち上がり、レオンの隣を歩く。
「せっかくだし、外で晩ごはん食べて帰るか」
「食べる!」
レオンの誘いに浮き足立つ。
私の返事にレオンが微笑む。
すごいしあわせ…デートって感じだ。
レオンの笑顔に私の胸がきゅんとなる。
でも本当に手汗ひどくないかな?
それにお手洗いも行きたくなってきた。
一度手を離したいけど、離したらもう繋いでもらえないかも。
心の内で葛藤する。
しかし我慢しても仕方がない。
「ちょっとお手洗いに!」
意を決して手を離し、近くのお手洗いに入る。
人からすれば結婚までしているのに何を今更と思われるかもしれないが、幼馴染ではなく恋人のように感じられる今が嬉しかった。
それにしてももったいないことをした。
もう手は繋いでもらえないかもしれない。
お手洗いを出て、レオンの元に戻る。
「お待たせ」
「いや、全然大丈夫。飯食いに行こう」
そう言うとレオンが当たり前のように、私の手を握った。
そして指を絡める。
ひゃあ、恋人繋ぎしてくれるんだ!
でも口に出すと、離れてしまう気がしたので何も言わず握り返す。
繋いだ手のあたたかさににやにやが抑えられない。
「今日のデート楽しかった!まだ終わっていないけど」
レオンの顔を見上げる。
するとレオンが目を丸くして私を見ている。
何か変なこと言った?
「あっ、ちがうの、その!デートというかお出かけっていうか!」
慌てて言葉を紡ぐ。
しまった、ずっとデートだと考えていたから口に出てしまった。
焦りながらレオンを見上げると
「ああ、俺もデート楽しかった。また行こう」
まなじりの下がった優しい笑顔を見せてくれた。
その笑顔にぽわんと胸があたたかくなる。
デートって認めてくれた。
この時間が少しでも長く続きますように。
満たされた幸せな気持ちでゆっくり歩いた。
ハッピーな、溺愛、甘々話にするつもりだったのに、今まで意外とレオンがクールな感じになってしまい、作者も戸惑っています。笑
今回のデート話でやっと甘さ増えてきましたかね?!
まだまだ続ける予定です。
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