やきもち
レオンとのデート当日。
ハンナのアドバイスをもとに、同じ家に住んでいるが外で待ち合わせにした。
なんでもその方がデート感が出ていいそうだ。
用もないのに外で待ち合わせは不審がられそうなので、美容院に行くからと先に出てきた。
普段はおろしているか、仕事の時はひとつに髪を束ねている。
だかいつもと違う自分にしてほしくて、先程、美容院で丁寧に髪を結い上げてもらった。
首筋を覆うものがなく、風を直に感じる。
「気合入れすぎたかな…」
そっと首筋を手で触りながら、待ち合わせ場所に向かう。
待ち合わせ場所に着くと、すでにレオンがいた。
遠目に見てもオーラを放っている。
かっこいい。
が、なぜか若い女の人、二人に話しかけられていた。
道を聞かれている?
いや、あれは。
女の人の一人がレオンの腕に手を伸ばした。
「その人、私の旦那です!」
思わず走り寄って、間に割り込む。
「えっ、奥さん?」
目をギラつかせた私に慄き、女の人が手を引っ込める。
やっぱりナンパだった!
私はレオンの腕を取り、ズンズン歩き出す。
「…ぷはっ。かっこよすぎだろ」
しばらく無我夢中で歩いていると、後ろから笑い声が聞こえた。
振り返ると、私に引っ張られる形になっていたレオンが笑っている。
「あっ…」
急に我に返って立ち止まり、掴んでいた腕を離す。
「ごめん。ついというか、勢いというか、夢中で…」
「なんで謝るんだよ。俺の奥さん?」
レオンがにやりと私の顔を覗き込む。
「からかわないで!」
顔が赤くなる。
完全にさっきの発言を面白がっている。
からかわれただけなのに、俺の奥さんという言葉の破壊力に胸が高鳴ってしまった自分が悔しい。
ぷいとレオンから視線を外し、歩き出す。
さっきは適当に歩き出してしまったので、ちゃんとサーカス小屋の方に向かって今度は歩く。
今度も先程の気恥ずかしさをごまかすために、ずんずん歩く。
しかしレオンがちゃんとついてきてくれてくれているのか、少し不安になって振り返る。
すると思った以上にレオンが真後ろにいた。
「なんで真後ろ?!横に来てよ」
思わず言うと、レオンが自分の髪をくしゃりとした。
「いや、ソフィアのうなじを人に見せたくないから」
ぼそっとレオンが言う。
「どういう意味?何かついてる?汚い?」
首を傾げ、手で触る。
「そうじゃなくて!」
レオンがもどかしそうに私を見る。
「…かわいいから」
ものすごく小さい声で言われたことに目を丸くする。
カワイイ…かわいい…
私が?!
意味を理解するのに時間がかかった。
だってあまりにもレオンが言わなさそうな言葉だったから。
下手をすると幼い頃を含めても初めて言われた言葉だったから。
ぼんっと顔が赤くなる。
「あ、ありがとう」
「ん」
レオンも照れくさそうに返事をする。
そうしてなんだがお互い照れて、ギクシャクした動きで、サーカス小屋に向かった。




