特技披露
気持ちのよい風が吹き、空は晴れ渡っている。
私は前に座っているレオンを後ろから抱きしめるように腕を伸ばす。
胸がドキドキする。
「さぁ出発よ!」
そして私は手綱を握った。
ハンナとレオンに好きになってもらう作戦を考えてから2週間経った休日。
私とレオンは私の実家にある馬小屋に来ていた。
そう、私がレオンに見せる特技は乗馬である。
レオンにも一緒に乗ってもらい、乗馬の楽しさを感じ、なおかつ私の魅力を知ってもらう作戦である。
ハンナに宣言した時は
「好きになってもらう方法として効果的かはわからないけど。一緒に馬に乗ってドキドキさせられたらいいかもね。努力次第よ!」
というお言葉をいただいた。
張り切ってレオンを前に乗せ、お父様の愛馬であるイザークを走らせる。
レオンの身長が高いので、私は横から顔を出して操る。
イザークに乗って風を切りながら進むのは爽快である。
実家にいた頃もしょっちゅうお父様やお兄様と乗って楽しんでいた。
なので一般的に言うと、特技と言ってもいいくらい乗り慣れているつもりである。
「どう?楽しい?」
顔を突き出し、レオンに問いかける。
「まぁ。でも想像していた絵面とは違うんだけど」
今朝、馬に乗りに行こうとレオンを連れ出した。
彼は彼なりに想像していた様子があったようだ。
「並走すると思っていた?」
実家には兄の愛馬がもう一頭いるのだが、残念ながら兄が乗って出掛けている。
並走は叶えられそうにない。
それに何より、今回は私の魅力を知ってもらうのが目的である。
一緒に乗って体感してもらうのが一番である。
それにこうやって密着していたら、ハンナも言っていたように多少ドキドキしてくれるかもしれないし!
「並走でもないけど。というかソフィアがこんなに乗馬がうまいって知らなかった」
「でしょでしょ!!」
レオンの言葉に目を輝かせる。
わかってくれた!私の特技を!
幼馴染であり、お互いのことはほとんど知っているような気がするが、私の乗馬姿をしっかり見せたことはないと思っていたのだ。
作戦通りで頬が緩む。
誇らしげな私を見て、レオンが微笑む。
その優しい顔にドキリとする。
いやいや、私がドキッとしてどうする。
しばらくイザークに走ってもらい、私とレオンが幼い頃からよく来る丘にたどり着いた。
シロツメクサがたくさん咲いていて、街が見下ろせるこの丘は私とレオンのお気に入りの場所だ。
18年前も今回も結婚の約束をしたのはこの場所である。
イザークからおり、伸びをする。
「気持ちよかったね!」
「ああ、そうだな」
レオンも満足してくれたようでよかった。
街を見ているレオンの横顔をそっと盗み見る。
柔らかい表情を見ると、幼い日の記憶がよみがえる。
ちょうどあの日もこんな天気だったかも…
次話、幼い頃の回想シーン入る予定です!




