第六話 勇者とは
どうもピースです。
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「私があんな口調だったり横暴な態度を取る理由は、パーティの仲間たちを追放したいからなんです」
「どうして追放なんて?」
「今の私達の実力では魔王を倒すことが難しいからです。仲間を失うくらいなら私が一人で魔王のところに行って相打ちしてきます」
「実力が足りないと言っておりましたがそんなことできるのですか?」
村長がもっともな質問をしてくる。
実際に俺の実力は魔王に及んでいない。
「私が勇者と言われているのは、魔王と生命オーラを共有できるからなんです。世間的には魔王を倒す力があると勘違いされていますが、そんな力はないんです」
驚きのあまり全く同じ表情をしている二人に話を続ける
「あいつらは優しいからこんなこと知ったら全力で私の事を止めるでしょう。しかし、私より弱い三人では魔王の所へ行ったとしても犬死です。だから、私一人で行き魔王を倒してきます」
「それでは勇者殿が」
村長は俺が死ぬつもりだったと聞いて悲痛な顔を浮かべている。
「私は大切な仲間を守るためならなんでもします。仲間を守るために必要なら喜んで嫌われ者になります。仲間を守れるなら私の命すら捧げることができます。それほどまでにあいつらには生きていて欲しいのです」
「どうして!・・・・・・置いていかれる仲間の気持ちは考えたことあるの?」
シャルちゃんは席を立ち上がり、詰め寄ってくる。
「普通に関わっていたら悲しんでくれるだろうね、でもあんなクズみたいな勇者が死んでも悲しむことはないんじゃないかな」
そのために俺は今まで行動してきたんだ、仲間からの同情などはほとんどないだろう。
俺の話を聞いたシャルちゃんは体重を一気に預けるように椅子に座り黙ってしまう。
「シャル、勇者殿が今日だけ同じ宿にいて欲しいと言っていたがどうなんだ?」
村長がシャルに尋ねる。
「別にいいわよ」
思いの外すんなりと了承してくれシャルちゃんに心の中で感謝する。
「お母さんに伝えてくる」
シャルちゃんはそう言うと席を立ち上がり、家の外へ出て行ってしまった。
「ポールさん協力してくれるんですか?」
「勇者殿協力させてもらいます。そこまでしてお仲間さんを守りたいと言う気持ち伝わりました」
「本当にありがとうございます!」
俺は村長に向かって頭を下げる。
「ところで勇者殿、ミラさんとアリスさんとソフィアさんのことが好きなんですよね?」
「え?・・・なぜそんなことを?」
村長はなぜこんなことを聞くのだろうか?
「命をかけて守りたい相手が嫌いなはずないじゃないですか」
「まぁ、好きではありますけど・・・」
俺が三人に抱いている気持ちは、恋愛などではなく家族に向けるような親愛の気持ちが大きい。
もちろん、三人の誰かと結ばれたいと考えたこともあったが、好きにならないように自分を騙してきた。
自分がしてきたことを考えると、好かれるなんて絶対に不可能だろう。
「好きな理由を聞かせてもらえますか?」
「それはちょっと・・・」
村長が答えづらい質問をしてくるので少しはぐらかす。
「協力してほしいんですよね?」
村長は俺にも負けないくらい悪い顔をしている。
「嘘ついたり、適当なこと言ったら協力の件と考えさせてもらいますよ」
「そ、そんな・・・」
またしても億劫な事を話さなきゃいけないのか。
「誰にも言わないでくださいね」
「私は絶対に他言しませんよ」
村長が信頼できる顔で答えてくれる。
「ミラは小さい頃から俺と一緒にいてくれる家族のような存在なんです。俺が落ち込んでる時も元気づけてくれたり、俺が勇者に選ばれた時は剣なんか触ったことないのに一生懸命練習して旅に着いてきてくれました」
恥ずかしい気持ちを紛らわすため、もうだいぶ冷えてしまったお茶を飲み干す。
「アリスはすごい仲間思いなんです。魔法使いなのに、パーティメンバーが危なくなるとヘイトを稼ごうとしたり、こんな俺が傷つくところを見ても悔しそうにしてくれたりするんです」
「それはなんとも」
俺の話を聞きながら村長は難しい顔をしている。
「ソフィアはとても優しいんです。どんなかすり傷でも治してくれますし、こんな俺とも仲良くなろうと歩み寄ってくれるんです。立ち寄った町や村では困ってる人を助けてあげるところを何度も見てます。こんなところですかね」
俺の話を聞いた村長は何故か急に焦った顔をし始める。
「もっと他に好きな所あるでしょう?特にアリスさんとソフィアさんに関して!」
「い、いえ、これがぜんb・・・」
「それでは協力の件・・・」
「あります!」
恥を忍んで変態でもなんでもなってやる!
「そうです!その調子です!全部言ってください」
なぜか俺だけでなく村長も焦っているが、気にしている余裕はない。
俺は実際に三人が好きだからではなく人柄を見て死なせたくないと思った。
しかし、ここで村長が納得する答えを言えなければ協力はおろか仲間にバレてしまう可能性がある。
適当でもなんでも理由を話さなければ。
「アリスは!アリスは俺を叱ってくれるんだ!お、俺は変態だからそう言うのがたまらないんだよ!」
俺の言葉に村長が少し引きながら耳を傾けている。
「ソフィアはみんなには優しいのに俺だけ軽蔑したような目で罵声してくれるんだ!」
たまらなく恥ずかしい、村長の方を向いているが一度も目を合わせられない。
俺は本心で言っているわけではなく、二人と仲良くした経験が少ないため今までされたことをドMになることでご褒美にしていた。
「勇者殿はMなんですね⁉︎」
「違います!どっちもです!」
「嘘をつけ!」
「そういう村長はどうなんだ!」
「私は根っからのSです!」
「あなた」
決して大きな声ではないが、その場が凍りついたかのように静まり返る。
村長に話しかける綺麗な赤髪の女性が映る。
村長はその女性に驚いた後すぐに女性が持っているノートを見て絶望したような顔をしている。
「話が終わったら私の部屋に来なさい」
それだけ言うと赤髪の女性は階段を上がっていった。
村長の顔があまりにも真っ青なので心配なり、話しかける。
「大丈夫ですか?」
「こんな気持ちなんですね。協力はさせてもらいます。シャルが夕方あたりに向かうと思いますのでよろしくお願いします」
「さっきまでの話は?」
「あぁ、もうどうでもいいです。この後予定ができてしまったのでそろそろ」
さっきまでの勢いはなくなり覇気のない村長の声が聞こえてくる。
「わかりました。ではよろしくお願いします」
俺のプライドを返せと思いながらも村長の家を後にする。
最後まで読んでくれたあなたに感謝