第十二話 究極の質問
どうもピースです。
みなさんは寝ている時夢で魔法を使ったことありますか?
私は水の中に火を灯しているめちゃくちゃな魔法を使ったことがあります。
俺はまだ朝日が昇っていない暗い荒原を歩いていく。
夜空に浮かぶ月は俺の進むべき道を照らしてくれる光となっていた。
「ごめん」
そんな言葉がただなんとなく漏れた。
誰に対してなのかすらわからない叫びは誰も聞くことはないだろう。
俺は夜まで体力を温存しながら歩き今日は一人の夜を迎える。
途中で魔物に出合いそうになることもあったが、スキルを使ってやり過ごした。
俺は暖を取るために火に当たっていると突然目の前の空間が歪み始める。
魔王が仕掛けてきたのかと思い俺は剣を抜き臨戦体制を取る。
しかし予想と反して歪んだ空間からはアリス、ソフィア、ミラが出てきた。
「逃げられるとでも思った?」
アリスが真っ直ぐこちらに向かってくる。
「え?」
予想できない状況に気が動転してしまう。
「ちょっとリアム借りるわよ」
「なんでここにいるだよ!」
アリスは俺を引きずるように場所を変える。
「やめ、苦しいって!」
「静かにしなさい」
ミラとソフィアの二人から離れると乱雑に放り投げられる。
「いて!」
アリスに上から見下ろされ、酒場でのことを思い出してしまう。
「別に今は怒っているわけじゃないわ。ただ今まであなたがしてきたことを返すだけよ。それが終わったらみんなでちゃんと話し合いましょうね」
俺は今まで魔法の練習と言ってアリスに魔法をぶつけていたりした。
「復讐は何も産まないぞ!」
「そうね、行きすぎた復讐はだめだわ。でもこれまであなたにされたことをそのまんま返そうなんて思っていないわ。ちょっと違う形で返そうと思っているの」
「そもそも俺に勝てると思ってるのか!」
だいぶ素に戻ってしまっていた気もするが、いつものクズ勇者を演じる。
「じゃあ私とソフィアで考えた魔法見せてあげる」
アリスから濃密な魔力が出ているせいで、周囲の光の屈折がおかしくなり月が赤く光っている。
すると急に背後から白い鎖が伸びてきて手足を拘束されてしまう。
「どっちが強いと思う?言ってみなさい」
拘束され身動きの取れない俺を嘲笑うかのように問いかけてくる。
「くそ!なんで解けないんだ!」
全力で暴れるが一向に鎖が解けない。
「その這いずり回る感じいいわね、すごく滑稽で素晴らしいわ」
アリスはアイテムボックスから椅子を取り出すと俺の目の前に足を組んで座る。
「ねぇ、パブロフの犬って知ってる?」
「そんなの知らないよ」
俺の言葉にトゲがなくなっていく。
こんな状況で強気になれるほどタフじゃない。
「簡単に言うと犬に餌をあげる時に胃液を分泌させるんだけど、餌を与える時に鈴も一緒に鳴らすの。それを続けていると餌がなくても鈴の音だけで胃液を分泌させるようになる条件反射のこと。つまり餌=胃液が鈴=胃液になって全く関連性のない反応を犬がしちゃうの」
アリスは足を組み替えながらパブロフの犬について説明してくる。
「それをあなたで試したいと思ってるの」
荒原に似合わない豪華な椅子に座るアリスは後ろの赤い月に白い髪を照らされながら俺を嗜虐的に見つめていた。
「試したいってどういうことだよ」
「あなたを私好みに調教したいってこと」
「そんなの許すわけないだろ!」
アリスがSなのは知っていたがここまでとは思わなかった。
「そうでしょうね。私も誰でもいいってわけじゃないわ。私は最初の頃の優しいあなたと今のあなたどっちを見てもいじめたくなっちゃうの。私をこんな気持ちにできるなんて光栄なことでしょ。受け入れなさい」
「いやお前は人にやられてやなことはするなって散々俺に言ってきただろ!」
受け入れることは出来ない。
勇者的にも男的にも世間的にも終わってしまう。
「確かに普通ならそんなことしないわ。私は人が嫌がることはしたくない。でもあなたは私にしてきたわよね?」
アリスは俺の首に鎖を巻きつけると左手で引き寄せる。
「あなたは私が嫌がることをするんだから、私がしてもいいでしょ。あなたが今受け入れるなら少し手心を加えてもいいわ。あなたがまだ何か言うようだったら、あなたのプライド全部壊してあげる」
嗜虐的に笑うアリスは左手を離し小突くように俺を蹴ってくる。
「私は優しいから選ばせてあげる」
頬杖をつきながら倒れ込んだ俺に究極の質問を投げかけてくる。
性感帯を増やすときに開発と言われたりしますが、パブロフの犬の原理がかかわってそうですよね。
最後まで読んでくれたあなたに感謝




