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ダーナの婚約事情

私には婚約者がいた。ロジャー様だ。


王妃様が私のために取り計らってくださった婚約だ。


「本当は私の息子と結婚して欲しいのだけれど」


大昔、私がまだほんの子どもの頃、王妃様はおっしゃったことがある。


「隣国の血の濃い者が、二代続けて王妃になるわけにはいかなくて」


そんな政治向きのことは、幼い私はよくわからなかったが、王妃様は、母のいない私のために王弟殿下の嫡子のロジャー様を婚約者と定められた。



後から考えたら、そんなに無理をしなくてもよかったのじゃないかと思う。


だって、王妃様の息子の王太子殿下フィル様はとてもやさしかったし、気も合ったのだけれど、フィル様の従兄弟のロジャー様は気性が荒かったし、大体、私のことを嫌いだった。


「お前は醜いから」


彼は平気で言った。


「俺はどうしても、お前の顔が覚えられない」


私はありふれた茶色っぽい髪と茶色の目、背丈は普通で少し太り気味だった。肌が荒れがちなのは悩みの種だった。


「子どもの頃は、純粋の金髪で、目の色も青だった。それに肌が真っ白でとてもかわいらしかったのに、なんで変わってしまったのだろうな」


子どもの頃の髪の色や目の色は変わるものだと乳母は父に向かって言い、父もそれは納得していた。


「お嬢様、お母さまがお嬢様を守ってくださいますよ」



もちろん、乳母は、義母が来たときにクビになった。もう大きいのだから乳母は要らないという理由だった。





状況はどんどん悪化して、今や、食事と着るものが大問題だった。生死に関わる問題だった。


案の定、食事はきちんとは来なかった。


忘れているのかわざとなのか、たまに温かいものが届く時もあったが、たいていは干からびたパンとチーズのカケラ、たぶん前の晩の誰かの食べ残し、そんなものが窓から差し入れられた。


しかも、困ったことに、だんだん、間が空いてきた。


めんどくさくなったのか、忘れているのか。



「寒いので、服を入れて欲しいのですが」


私は、下男に頼むように声をかけたが、下男は俺は知らないと言いだした。


「女ものの服なんか知らねえよ。食い物を持ってきてもらえるだけ、有難いと思え。仕事があるのに、面倒くさい。そんなこと言うなら、今度から、俺は食事なんか運ばねえ。別のやつに頼め」


「そんな!」

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