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弘美と純一の場合 vol.96. 愛のキューピット
そんな折り、頭の中が、スッキリとしていない純一の耳に、
思い掛けずにカウンターの中のマスターの言葉が飛び込んできた。
「へぇ~それじゃ、その女の人、愛のキューピットみたいですね~!」
目の前の若い…20代半ばのような、
そんなカップルの話を聞いているような…。
そして、そのマスターの言葉に返すように、
そのカップルの女性の言葉…。
「そうなの、彼女がいなかったらもしかして、今の私たち…こんな風になっていなかったかも…。」
「だよな。…彼女がいなかったら、俺…まったくこいつの良いところに気付かなかったかも知れないんだからな~!」
聴き耳をしたわけではなかったが、
マスターのその言葉に、ちょっと興味を引かれて、
途切れ途切れではあったが、その若いカップルの会話が純一の耳には、
澄んだ声のように、次から次へと聞こえてくるのだった。
「その女の人…???愛のキューピット…???」




