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弘美と純一の場合 vol.75. 遠く離れたテーブルに…。
偶然にも、周囲には誰もいなかった。
ある意味では、このような男女のシーンを、
誰かがどこかで見ていると言う、
シチュエーションはありようなものだが、
全くと言って、周囲に人の気配は感じられず、
バルコニーは外の騒音が静かに聞こえる程度であった。
偶然なのかは分からないが、
人が立ち寄らない一つの要因としては、
開かれたバルコニーのドアの内側で、
静かに揺らめく両開きのカーテンが外を遮り、
夜の風に静かに揺れているだけ…。
会場で盛り上がっているビアガーデンの席、
他の一般客も多く、ほぼ満席状態の中、
その中には、偶然にも、遠く離れたテーブルに純一の男性のグループ、
そして礼子の女性数名のテーブルがあったのだ。
賑やかに盛り上がる男性の飲み方とは違い、
会話と料理とカクテルなどを堪能する女性たち。
その中で礼子は遠くのテーブルを眺めながらも、
奇遇にも純一の顔を目撃したのである。




