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弘美と純一の場合 vol.72. アバンチュール
そんな事は有り得ない。
…そうは思っていても、起ってしまったものを否定する事は出来ない。
例えそれが…、アルコールが入っていた…としても…で、ある。
女性遍歴が全くない男と、男性との恋愛遍歴のある女性との、
それが一度だけのアバンチュール。
しかし、その一度のアバンチュールが、
純一としては初めての女性との関係となるのであった。
しかも、そのアバンチュールは、
見事としか言えないほどに、
周知される事は以後も一切になく、
ふたりだけのただの一度きりの出来事となったのである。
その出来事で、女性は…、
「彼女のものになる前に…私が…。」
と言う女の性が胸中にはあったのである。
つまりは、周囲が女性を見る視線を意識していると同様に、
女性からしてみても男性を見る視線はあるのが道理なのである。
それを様々な男性と関わり合いを持った、
加瀬礼子であるならば…なのである。




