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弘美と純一の場合 vol.66. 終わらせたくない。
既に忘れてしまった過去の記憶…。
そんなものなど、人として有り得るはずのない事…、
そんな事は弘美にしろ、裕子にしろ、
分かり切った事なのであった。
過去が最愛の人の思い出で満ちているからこそ、
それが逆に、自分にとっては掛け替えのない記録として、
残っているものなのである。
そして、残って行くものなのである。
ただ…、その記憶としての思いでも…、
いつしか、訪れる男と女の様々な出来事によって、
塗り替えられると言う事は、事実あるのだと、
弘美と裕子、それぞれが、承知していたことなのだった。
だからこそ、弘美にしても、裕子にしても、
あの時の偶然の出会いと言うものを、
単なるエピソードとしては、終わらせたくない。
と言う、思いが二人の素直な感情になっているのだった。
「杏子ちゃん…ランドセル…どうだった…???」
「弘美…!」
裕子は考えている様子だった。
確かに…歳の差はあるかも知れない…。




