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弘美と純一の場合 vol.58. 自分のために何かを…。
取引会社から駅に向かう途中で、
ビルに掲げられた化粧品の看板が目に入り、
自然に体がそのショップに引き寄せられるように…、
気が付けば店員に薦められて、
サンプルのルージュを引いてもらったのである。
…と言うより、何故かしら、
自分のために何かをしたくなるような、
そんな思いが心にあったのだった。
その証拠に、道を歩きながらにしても、
足取りがいつもと違い、ある種の軽さをも感じるのだった。
「もしかしたら…。」と思う気持ち。
そして「でも…歳が離れすぎ…。」と言う気持ちが、
頭の中で行き来しているのを感じながらも、
それでも、藤崎純一と言う、
初めてお互いを知り得ての、
最初のインプレッションは悪くはなかった。
そして、何よりも「この人に肩を支えられた…。」と言う、
先日の事が、「もう忘れられない出来事」と言う風に、
弘美の心の中で、確立しつつあった。




