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弘美と純一の場合 vol.54. 忘れかけていた顔…。
会社に戻る道すがら、
何故かしらいつもの自分の雰囲気とは感じが違っていた事を、
弘美自身もわずかではあったが認識していた。
通りすがりのファッションショップに、
ちょっとだけ顔を覗かせてみたり、
通りの化粧品の看板に目を走らせながら歩いて見たり。
道行く若いカップルや恋人らしい2人連れに視線を投げ掛けて、
ちょっとだけ自分だけで微笑んでみたりと…。
その証拠が、帰りの地下鉄での窓に映った自分の顔であった。
「もしかして…私…???」
…まさか…有り得ない…。
と言う言葉が体を一度は覆ってはみたが…、
すぐにその思惑は目に見えない煙に掻き消され、
「…なら…この私の顔は一体…???」
自分でも信じられないほどに、
何か、落とし物が見つかったような…、
そしてまたは、知らない内に、忘れていたものが、
咄嗟に見つかったような…。
そんな不可思議な…、それでも忘れかけていた顔が、
窓の向こうには映し出されていた。




