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弘美と純一の場合 vol.53. 感触…そして実感
ただ一度の打ち合わせで、
しっかりと二人の雰囲気から、
ある意識を感じ取ったのが加瀬礼子であった。
「もしかしたら…このふたり…。」
そんな思惑を感じながらも、敢えて純一には、
「頑張ってくれたまえよ藤崎く~ん」と肩をポ~ンと叩くのであった。
しかし…この時既に加瀬礼子と藤崎純一の間にも、
何等かの疼くものが潜んでいたことを、
礼子、純一お互いも、知る由もなかった。
純一の肩を軽く叩いた瞬間、
何かしら逞しい男性の肉体を礼子の手は感じ、
また、純一も柔らかい手で、軽く叩かれた事に、
体が記憶しての、後々の顛末へと発展するのである。
けれども今、純一は弘美との初めて出会った、
あの喫茶店での弘美の体の感触と、
浅川弘美と言う女性に再会し、
初めて自分の存在も確かにしたと言う事が、
純一自身を占拠していた。
さきほどまで緊張していた鼓動も、
ようやく落ち着きを取り戻していた。




