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弘美と純一の場合 vol.44. 娘の手を…「お前には…」
そんな父親も純一がまだ10歳にも満たない頃に、
脳出血で亡くなっている。
大手の建設会社に永続勤務で表彰され、
出世ほど課長どまりではあったが、
心底、家庭における様々な事をしっかりと踏まえて、
住まいとは何ぞや、と言う事を、
人の在り方から意外な家族の影の部分まで、
仕事に影響させる人格の持ち主。
そして、それを垣間見ながらも上手に人間模様を考えながらの、
仕事に対する意気込みに周囲の社員からも、
愛される性格の持ち主だった。
そんな折に突然起こった難病。
病室の父親の姿を見て、純一は姉の朋子の腕に巻き付いたままで、
ただ、茫然と立ち尽くしていた。
ほどなくして、その数日後には父親の危篤の連絡が病院から入り、
そのまま言葉もないままに父は、
娘朋子の手を握ったまま息を引き取った。
「お前には悪いが、純一の事を頼む」と言い残したかのように…。




