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弘美と純一の場合 vol.33. ある女性の存在
弘美が軽く会釈をした際の、
その目線が、再びランダムに動いたのを、
傍にいた加瀬は見逃さなかった。
加瀬礼子、この女性こそが、今後、弘美と藤崎純一、
そして裕子までも巻き込んでの様々な人間模様を、
上手に絡める人物なのであった。
年齢こそ弘美より7歳も年下ではあったが、
恋愛遍歴は数多く、その中には海外の男性との恋愛経験もある。
そんな経験もある事が道理で、英語も堪能である。
生まれは日本ではあるが父親がイギリス人、
母親が日本人で千葉県出身、かつては売れっ子の女流作家であった。
今は既に他界してはいたが、両親の薦めで高校を卒業と同時にイギリスへ留学。
異国で知り合ったサークルの男性と恋に落ちた。
しかし、その男性が大の日本好きと言う事で、
日本に戻り、同棲生活を体験している。
…が、しかし、その後、今度はそのイギリス男性が、
日本で知り合ったアメリカ人女性と関係を持ち始めたために、
礼子は激怒し別れている。