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弘美と純一の場合 vol.32. 自己紹介
「…浅川さんも良いでしょ、彼と一緒でも…」と、
目で話し掛けるように、相手先の担当者、
加瀬は藤崎と弘美を交互に見ながらも、
唇を少しだけすぼめながら眉を開くのだった。
その合図が切っ掛けにもなったが如くに、
必然的にスポーツマン的なその肉体でも、
どこかしなやかさを持つシルエットで、
芸能人の誰かに似ているような…、
そんな甘いマスクの、薄い唇から、
「初めまして、藤崎純一です。こういう企画担当は、何分…初めてなので、ご迷惑掛けるかも知れませんがよろしくお願いします。」
そう、自己紹介をしながら、
ポケットから自分の名刺を弘美に渡すのだった。
「広報部第1課 藤崎純一」
と印刷された名刺を受取りながら、
弘美も、持っていたバッグから自分の名刺を藤崎に渡し、
「グリーンマイルトラベラーズの浅川弘美と申します。」
そう自分を紹介し、軽く会釈をした。