弘美と純一の場合 vol.167. Time goes by ….
夏の夜の、あの加瀬との事がなかったら、
多分、飛行機での咄嗟の弘美との関係は、
なかっただろうと純一は感じていた。
確かに偶然が重なったとは言え、
あれが運命だったのだと確信したのだった。
もちろん、社内での加瀬と純一との間は以前と全く変わらずのままで…。
当然ながら、この時点では、パリ旅行に参加した他の社員の誰一人、
まさか藤崎純一と浅川弘美と関係が出来たと言う事など、
知る人もいなかったのである。
もちろん礼子の事である、こういう男女の事は、
その時が来れば、自然に人の耳には触れるものだと言う事を心得ていた。
別の意味では今後の純一の姿勢、態度から社員の誰かが、
それなりに気付くと言う場合もあるかと言う事も…。
そして…もう一人…、肝心の弘美の妹分の佐也加は…と言えば…、
パリから帰国後の弘美に、正に妹分如くに、
弘美にべったりと張り付いたのであった。
そのはしゃぎようときたら…、
勤務以外では弘美も呆れるほどでもあった。
でも…、そんな佐也加を見ながら、
自分と純一の事を喜んでくれる人々の事を考えると、素直に、
「…こんな40も真ん中の女が、若い30代初めの男性と恋い焦がれる事を…こんなにも喜んでくれてる。」
そんな事を考えると、逆に弘美の方が、
涙が出るほどに嬉しく、自分を幸せだと感じるのだった。
それからと言えば、純一に弘美の家族同様の裕子と徹、
そして杏子を紹介し、無論佐也加とも一緒に食事をしたりと紹介し、
わずかの間に、純一の人となりを弘美の周辺でも快い感触となって行った。
そして弘美と純一の仲を取り持ったような感じの礼子とも、
弘美からあらためて裕子夫婦は紹介され、
和気藹々とした雰囲気で知り合いになれたのだった。
同じように、仕事で佐也加と一緒に礼子とも会い、
ここでまた佐也加に素敵な男性を紹介してくれる事も、
佐也加は礼子と約束したのであった。
レディファーストとしての弘美の周辺と純一が知り合えた後に、
初めて純一は姉の朋子家族を弘美に紹介したのであった。